「アジャイル開発」は不可能! アパレルのPLM導入が失敗する明確な理由

河合 拓
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メディアの報道とは異なり、いまアパレル業界における最大の論点はPLM(Product lifecycle management)の導入である。しかし、導入支援をお願いしたい、というものでなく「導入したが止まっているのでどうにかして欲しい」である。実態を正確に表せば、「導入は終わったのに、誰も使っていないので放置されており、ミニマムのサブスクフィーだけ取られている」だ。メディアではすでに「古い話題」となっている「PLM導入」だが、このデジタル化の時代に相も変わらず、紙と鉛筆で縫製仕様書を作成し、五枚複写の専用伝票を手書きで書き、目視で違算管理をする。異業界の方からしてみれば信じがたいことかもしれないが、アパレル産業では、未だにこのようなことをやっている。本日は、PLMが巻き起こす悲劇について書いてゆきたい。

Melpomenem/istock
Melpomenem/istock

パッケージ導入の手法を理解しないアジャイル導入

 システム化の世界には、「アジャイル」という言葉がある。これは、短期的な、という意味で高速でシステム導入をする手法のことだ。
 システム会社の請求は、人工 (にんく)といって「人の単価 x 人数」だから、大量の人員を投下し開発が長期化すればするほど(一般的に)請求書の金額が積み上がる。また、変化の激しい世の中だからこそ、システム導入はスピーディな方が良い。さらに、最近では「デジタル祭り」も大賑わいということで、システム会社としても1回あたりの導入金額を大きくするより、高回転をしたほうがよく、「さっさ検収したい」というのが本音なのだ。
 したがって、世の中は猫も杓子もアジャイルとなる。

 システム開発の主流は、「パッケージ」導入だ。
 「パッケージ」というのは、スーツでいえば、既製品のようなもので、修正できる範囲が決まっており、その範囲内でシステム開発ができあがる。逆に、フルオーダー型を「スクラッチ」開発という。古くはSAPOracleなど、世界的に有名なERPパッケージシステム(業務統合システム)を導入することが、企業にとっては、なんの戦略もなくあちこちにパッチワークのようにつぎはぎで導入されたシステムを一気にアップグレードするための秘策と思われてきた。

  ERPパッケージベンダーはいう。「私たちのパッケージは長い年月の中で培われたベストプラクティス(世界で最も正しいもの)だ。だから、もし、このパッケージを導入するにあたって、ギャップがあれば、それはあなたたちのやり方がおかしいのである」と。

  しかし、この半ばエゴイスティックな考え方の論争には決着がついている。企業のプロセスがすべて同じであるはずがない。企業のビジネスモデルを分析した結果、その企業の競争力を削がないレベルでのシステムの組み合わせであるBest of Breed (BOB、もっとも適切なシステムを組みあわせて使う手法)が主流となったのである。
 PLMも「PLMパッケージ」と呼んでいるが、私はマーチャンダイジングの分析ツール、サンプルを電子化する3D CAD、そして、海外縫製工場の生産管理を組み合わせ、「Digital SPA」と命名。今では海外で当たり前となっている、クラウドベースで複数のベンダーによる完全同期のサプライチェーンを生み出すためのコンセプトを描き、各商社から経済産業省にまで「Digital SPA」のプロジェクトをこなしながら、その概念を惜しみなく説いて回り、産業界のために尽くしてきた。
 しかし、最近まで聞かなくなったPLMだが、「PLMが動いていません」という相談がくる。そこで、調べてみると、恐ろしい実態が明らかとなっていた。

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