巣ごもりで市場拡大も今後は縮小トレンドへ……再編不可避、ホームセンターの生き残り戦略とは
巣ごもり需要から一転、市場縮小が懸念
HCの市場規模は2005年に3兆9880億円に達して以降、長らく4兆円弱とほぼ横ばいで推移していたが、2020年はコロナ禍による巣ごもり需要の追い風を受けて4兆2千億円に拡大した。しかし、2021年には巣ごもり需要は一巡して4兆760億円に減少、本年度も売上動向が概ねマイナスで推移していることから、再び4兆円割れとなることも懸念される(図表⑦)。
前述のとおり、HC市場はベースが縮小トレンドにあることから、「巣ごもり」という特殊要因が薄れてくれば、横ばいから縮小へと転じることは避けられない。縮小する市場のプレイヤーが生き残るためにとるべき戦略といえば、①新市場を開拓する、②既存市場を拡張する、③業界再編を行ってプレイヤー数を調整する、ということになる。
新市場開拓で先頭を行くのはコメリ(新潟県)である。コメリは農業関連需要を新市場として開拓を進めてきた。そのため、昔から農業支援に関する4つのソリューション、①ローコストな農業資材提供、②営農支援体制「農業アドバイザー」、③農産物販売支援、④収穫期払い可能「アグリカード」、を提供することで農業関連需要の取込みに成功している。
さらに、本来は競合するはずの農協との棲み分けを実現することで、地域農協との業務提携関係を構築し、共存可能な関係を創り出しつつある。地域農協の農業関連資材、肥料などの販売事業が不採算であることに目をつけて、販売を受託することで、「競合」を「協業」に替えるという“離れ業”を実現したのだ。全国の農協の当該事業規模は2兆4000億円程度あることを考えれば、コメリが掘り当てた鉱脈の大きさがわかるはずだ。
既存市場の拡張ということでは、カインズ(埼玉県)の大都市攻略戦略が注目される。前述のとおり、業界最大手ながら大都市ではそれほど存在感の無いカインズは、都市生活向け雑貨の店「Style Factory」を開発して、大都市エリアの商業施設内への出店を始めている。この戦略は地方、郊外のロードサイドに大型店舗を出店して成長してきたニトリ(北海道)が、生活雑貨中心の「デコホーム」という小型店で、急速に首都圏に浸透しつつあるのと同様のイメージだと言っていいだろう。
ただ、2017年に誕生した、このカインズの新業態はまだ5店舗に過ぎず、まだ実験段階なのだろうと思っていたのだが、昨年、都市生活DIYの元祖「東急ハンズ」(新社名はハンズ)を買収し、大都市圏でのシェアアップを実現した。ハンズをグループに入れたカインズは、都市生活者への提案力を急速にブラッシュアップして、浸透を図っていくことが予想される。
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