角上魚類ホールディングス(新潟県/ 栁下浩三会長兼社長:以下、角上魚類HD)が展開する鮮魚専門店「角上魚類」は、“魚離れ”が叫ばれるなかでも高い支持を獲得し、食品スーパー業界の関係者からも注目を集めている。そんな同社が近年強化しているのが、魚総菜といった即食商品だ。多くの消費者の心を掴むヒントを取材した。
店数を増やさず
売上を48億円積み増し
コロナ禍では内食需要が高まったこともあり、角上魚類HDは絶好調だ。内食需要の拡大も相まって、2020年度は客数と買い上げ点数をともに増やし、売上高は対前年度比11.6%増の394億円、21年度はさらに同1.7%増の401億円となった。コロナ前の19年度との比較では、店数を増やしていないにもかかわらず、売上高を約48億円積み増すことに成功している。
角上魚類の商品カテゴリーのなかでも伸長しているのが、主力の寿司や刺身、近年開発に力を入れている魚総菜といった即食商品だ。
6月30日、角上魚類が移転オープンした最新店「角上魚類流山店」(千葉県流山市:以下、流山店)の売場を見ると、メーン出入口から入ってすぐの場所に総菜売場を配置し、揚げ物、焼き物、煮魚など、約50品目の魚総菜を揃えている。
1日5000個売れる
弁当のつくり方とは
流山店では、新たな試みとして弁当を大きくコーナー化した。ヒット商品の「海鮮天丼」(650円:以下、税込)をはじめ10品目以上を販売する。
角上魚類の弁当の特徴は、鮮魚の魅力を訴求する商品づくりだ。流山店の内村正樹店長によると「鮮魚専門店ならではの魅力で差別化できるように、まずはメーンとなる魚メニューのボリュームを出し、そこから商品全体を設計している」という。
たとえば、「海鮮天丼」は大ぶりな海老で特徴を出しており、多い時には全店ベースで1日5000個以上を売るヒット商品だ。こうした弁当の好調がけん引し、流山店の総菜の売上高構成比は全体の15%ほどと、旧店よりも5%ほど高くなっている。
ボリュームある商品が人気の一方で、消費者の声に応じて近年は適量を意識した商品も揃える。取材費は1つ400円のミニ弁当「焼きサバほぐし飯」や「ホタテ飯」などを販売していた。
ツマが見えないほど
ボリュームを出す
刺身や寿司の提案に力を入れている。魚種のなかでも人気のマグロを積極的に寿司や刺身に商品化する。さまざまな品種のマグロが少しずつ味わえる盛り合わせ商品は、現場のアイデアから生まれたもので、とくに人気を得ている。
刺身でも訴求するのはボリュームだ。来店客にお得感を感じてもらえるように、刺身のツマが隠れるくらい、刺身を盛るのが角上魚類流だ。
自分の好み、適量に
合った商品が買える
もう1つ特徴的なのが、さまざまな量、組み合わせの盛り合わせ商品を用意している点だ。「お客さまに、ご自身の好みや都合に合った商品を選んでいただけるように意識している」(内村店長)という。たとえば流山店では、貝の盛り合わせだけで大・中・小サイズを揃えてきた。
近年、食品スーパーの鮮魚売場では冷凍商品の売場が広がっている。そうしたなかで、鮮魚や刺身の提案は手薄になりがちで、これを受けて角上魚類にそれら商品がいっそう求められるようになっているという。
魚総菜や刺身といった即食商品は、忙しい現代人の需要に即しており、工夫次第で来店動機を創出できる。角上魚類からは、そんな商品を開発するヒントが得られるはずだ。