「値上げの秋」も追い風に成長を続ける小売再生工場「業務スーパー」

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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なぜ、中小小売業は業務スーパーとタッグを組んだのか

 神戸物産の慧眼は、こうした加盟小売企業とのパートナーシップを成長にフル活用したことにあるとみる。多店舗展開チェーンにとって避けられない課題の一つが、時間の経過に伴って変化する環境変化(競争環境、立地環境など)に応じて、店舗のスクラップ&ビルドを継続しなければならないということがある。

 業務スーパーがFC展開を始めた2000年以降、女性ドライバーの増加、軽自動車の普及によって、地方や郊外でモータリゼーションが加速的に浸透した。これにより、ロードサイド小売店舗の立地は住宅地から幹線道路沿いに移り、また消費者の機動力が拡大したことに伴って最適な売場面積は4~5倍に拡大した。

 その際、それまでの住宅地の小中型店舗は競争力を失って、スクラップの対象店となるケースが多発した。その際、神戸物産は業務スーパーのコスパの高い商品力との組み合わせによる事業再構築を提案し、多くの店舗が競争力を回復したり、業務スーパーに転換することで存続することに成功した。

 業務スーパーの加盟店企業は、当時こうした悩みを抱えていた食品スーパー、ホームセンター、酒ディスカウンター、カー用品店チェーンなどが、生き残りを賭けて業務スーパーと「同盟」を結んだのである。結果、大半の加盟店が再び成長基調に回復し、画期的な提案を行った神戸物産は、小売業界の有力企業にのし上がった。

 加盟店とのパートナーシップによって、急速な事業規模拡大に成長した業務スーパーはそのバイイングパワーをフル活用して、国内食品メーカーをM&A(合併・買収)をして稼働率を上げることでその再生を実現、さらなるコスパの向上を実現し続けている。

 今後、値上げの秋を経て業務スーパーはさらに成長して、バイイングパワーを増していくことになる。そして、競争激化によって経営環境が悪化した食品メーカーをM&Aで傘下にいれて、成長を続けていくだろう。業界各社にとって厳しい「値上げの秋」は、業務スーパーにとっては大きな飛躍のチャンスとなるだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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