「値上げの秋」も追い風に成長を続ける小売再生工場「業務スーパー」

中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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ヤオコー、オーケーに次ぐ存在感?!

 業務スーパーの店舗網は、3店舗の直営店を除き、ほとんどがフランチャイズ(FC)加盟店により構成されており、FC本部である神戸物産は商品開発、製造、インフラ提供を行っている。商品の1/3以上を占めるPB商品に関しては、メーカーへの製造委託ではなく、自社グループ内に数多くの生産工場を持つことで、製造コストを抑えたコスパの高い商品の供給を可能にしていることで知られる。

 会社が示す加盟店月間損益モデルは図表③の通りだが、この粗利益率から逆算すると、業務スーパーの流通総額は4200億円程度となり、首都圏の食品スーパーでいえば、ヤオコー(埼玉県)、オーケー(神奈川県)に次ぎ、マルエツ(東京都)より少し大きいといった存在感を持つまでになっている。業務スーパーに関しては、その商品力が話題となっていることが多いが、今回は、店頭で売上を支えるパートナーであるFC加盟店組織についてふれてみたい。

図表③ ※神戸物産IR資料より筆者作成

上場企業も! 業務スーパーの躍進を支えるFC加盟店

 会社資料(図表④)によれば、神戸物産のFC加盟店は直轄エリア(本部と加盟店が直接契約する地域:エリアは図表④の通り)に87社と、地方エリア(本部は県ごとのエリアFC企業と契約。地域内の加盟店はエリアFC企業と契約する)の15社となっている。

図表④ ※神戸物産IR資料より筆者作成

 加盟店は基本的には地場の中堅・中小小売業が契約者となっており、チェーンストアとして複数の業務スーパーを運営していることが多いが、中にはG-7ホールディングス(兵庫県)やオーシャンシステム(新潟県)のような上場企業もいる。業務スーパーのFCは加盟店の裁量を広く認めているため、加盟店が運営する生鮮を併設した店や異業態の小売業との組み合わせ店舗がさまざまな応用編として展開されているのも特徴となっている。

 G-7ホールディングスは、カー用品チェーンからスタートし、業務スーパー、精肉小売チェーン、ミニスーパーなど複数業態を展開する小売事業者で、売上高1685億円、経常利益78億円(2022年3月期ジッw3期)の事業規模を持つ。なかでも、業務スーパーを175店舗展開し、売上高891億円、経常利益42億円を稼ぐ主軸事業に育っている。グループ内で運営する精肉小売チェーン「お肉のてらばやし」や農産物直売場「めぐみの郷」との併設店も数多くあり、生鮮品のない業務スーパーとのうまい組み合わせとなっているようだ。

 また、食品スーパーを中心に展開するオーシャンシステム(新潟県)も業務スーパーと自ら運営する生鮮売場を組み合わせた生鮮+業務スーパーである「チャレンジャー」業態や酒&業務スーパーという業態展開で、併せて593億円(2022年3月期実績)を売り上げる。業務スーパーの成長は、神戸物産の商品力と加盟店の経営資源が連携することによって支えられている、といっていいだろう。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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