イオン22年度1Q決算“GMS黒字化”が示す 吉田新体制下の改革本気度と今後の焦点とは
イオンはGMSとSMの両事業に対して積極的に投資を継続していますが、投資採算は低調でした。しかもGMSとSMは、高収益のヘルス&ウエルネス、金融、ディベロッパー事業と比較して、イオン本体の持分が高めです。
したがって、GMS・SMの収益を高めれば、EBITDAが高まり、Debt/EBITDAの引き下げにつながると同時に、親会社株主に帰属する純利益の押し上げにつながりやすく、ROEの引き上げにもつながります。事業ROIも改善し、部門に対する投資が正当化されやすくなります。(ちなみに2022年2月期の有価証券報告書によれば、監査法人がGMS事業の固定資産に係る減損損失の認識の要否に関する判断の妥当性を点検しており、経営陣がGMSの収益向上を進める刺激になっていると思います。)
イオンの経営計画の本丸は実はGMS・SM改革にあると考えられるのです。
GMSが持続的に改善することを期待
とはいうものの、GMSの収益改善は長らく言われてきたテーマであり、逃げ水を追う形になるのがこれまでの歴史だったと思います。
また最近の米・ウォルマート(Walmart)の決算ガイダンスの下方修正では、インフレと実質賃金の目減りが消費者の購買バスケットの中身を変容させ、グロサリーは売れるが利鞘が圧迫され、アパレルなどの非グロサリーが売れず在庫対応が後手に回るという事態になりました。このリスクが日本でも顕在化する可能性は否定できません。光熱費など高騰が販売管理費をさらに圧迫するリスクも高そうです。
筆者はGMSの収益確保・向上こそイオンの経営改革の一丁目一番地だと思いますので、多少のブレがあるにせよ、四半期ごとに着実に収益を管理していただきたいと願いますし、幸先良いスタートを切った以上、その可能性に期待したいと思います。
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セブン&アイは百貨店をダイベスト(売却、投資引き揚げ)し、コンビニ事業のフランチャイズ展開の強みを日本から米国に移植しローカル化する成長戦略を遂行しています。
これに対してイオンは多角的な事業構造を維持しつつ、採算管理を強化し、さらに中国、東南アジアの成長を取り込みながら、進出国で得られた知見を横展開する(例えば中国のDXの知見を日本で活用)戦略をとっており、セブン&アイとは異なる路線を歩んでいます。
しかし異なる方向に進むように見えるこの2社には、
イオンのトップバリュは、節約志向に対応する”ベストプライス”
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師
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