過去最高益のトリドールHDが打ち出す、中長期経営計画の全貌
「丸亀製麺」を主力とした飲食業を展開するトリドールホールディングス(東京都:以下、トリドールHD)は5月17日、2022年3月期の連結決算および新たな中長期経営計画を発表した。今年5月に策定したコーポレートスローガン「食の感動で、この星を満たせ。」を掲げ、国内のみならず海外でも積極的にビジネスを展開している同社の決算概要と今後の成長戦略についてレポートする。
丸亀製麺、海外事業好調で黒字転換!
トリドールHDの2022年3月期の連結業績(IFRS)は、売上収益が対前期比13.8%増の1533億円。コロナ禍の影響を受け、前期は赤字だった事業利益は54億円の黒字に転換。事業利益の大幅増に加え、時短営業などによる政府の補助金128億円が加わり、営業利益は同215億円増の142億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同144億円増の89億円と、営業利益と当期利益は過去最高を更新した。
社長兼CEOの粟田貴也氏は「コロナ禍の影響が残る中でも、本業がしっかり回復し、力強く成長した年であった」と評価する。
セグメント別の売上収益の内訳をみると、主力の丸亀製麺事業は前期から111億円増の大幅増収。イートインの回復、および「うどん弁当」のヒット、テイクアウトが貢献。21年5月より本格的展開したテイクアウト事業では、専門窓口を店舗に増設したことが売上拡大につながった。イートインも伸長し、店内で飲食した顧客が家族にテイクアウトをする流れができたことにより、今後もテイクアウト窓口設置店の増設を計画する。
海外事業もコロナ感染拡大の影響を受けながらも、同97億9700万円増と大幅増収を果たしている。期中は29店舗を出店。過去最高売上を更新したハワイ店を含む米国、シンガポールの「MONSTER CURRY」、ロンドンの「MARUGAME UDON」が大成功した英国が増収を牽引した。
その他セグメントでも、ハワイアンカフェの「コナズ珈琲」、レストラン・グローサリー併合型の新業態である「肉のヤマキ商店」がそれぞれ増収を果たしている。
コスト高騰の中でも今期は増収増益を予測
2023年3月期の業績計画では、売上収益が同15.5%増の1770億円、事業利益が同14.2%の62億円とした。営業利益は同71.9%減の40億円、当期利益は同80.5%減の13億円と大幅減益の予定だが、22年3月期の政府補助金の影響をのぞく営業利益は増益となる予定だ。
国内不採算店舗の整理を多く行った前期から一転し、23年3月期は国内外ともに新規出店に注力し、丸亀製麺はロードサイドおよび都市型の立地モデルの強化に取り組む。
海外事業では「Tam Jai」「MARUGAME UDON」など多数の業態において、直営店の新規出店およびフランチャイズ展開を強化し、期末には同144店舗増の1864店舗を見込む。
原価高騰とエネルギー価格の上昇については、価格改定、商品ミックスの適正化、DXの推進および独自開発中のAIによる需要予測やワークシフトによる効率化、「エコ釜」の導入などによる原材料・廃棄ロスの圧縮など原価率コントロールを積極的に実施するとしている。