ローソンが成城石井の上場検討、腑に落ちない4つの疑問とは
疑問4 ローソンは株式譲渡金をどう使うのか
仮に成城石井の株式時価総額を2000億円として、その半分を売却した場合の税引き後の受け取り金額は500−600億円の規模になるかと思いますが、それをどう使うのかがもう一つの大きな疑問点です。
ちなみにマクロ的に考えると、インフレ基調に入ったことで実質所得の目減りリスクが家計で高まっており、消費者の価格に対する目は厳しくなると思います。したがって、コンビニ事業の根幹にある「高粗利をフランチャイザーと分け合う」事業モデルが盤石でなくなる可能性は否定できません。省人化を軸として店舗運営コストの削減、顧客の囲い込み、広告などの新たな収入源の開拓が不可避ではないでしょうか。さらに言えば、既存のフランチャイジーとの関係を悪化させずに、コンビニ型自販機や無人店舗などによる直営型の展開も考えるべきタイミングだと思います。ローソンがシナジーの薄い事業を換金し、事業モデルの抜本的転換のために使うとなれば、一定の理解は得られそうに思います(ただし、それならなおさら全株処分して転換を加速するべきだと思いますが)。
ということで、現時点ではまだ完全に腹落ちしないスキームです。ローソンはおそらくこの辺りのモヤモヤをいずれ解消するべく十分な説明をすることでしょう。期待したいと思います。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師
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