冷凍弁当宅配の「ナッシュ」がコロナ禍で販売数を8倍に伸ばした方法
食品関連の知識ゼロからの立ち上げ
サービス立ち上げのきっかけは、社長である田中智也氏の前職での経験にあるという。葬儀紹介サービスを提供するサービスを立ち上げ、運営していた田中氏は事業を通じて、亡くなる方の死因のおよそ8割が生活習慣病だということに気づく。この経験をきっかけに「社会全体を健康にする」をミッションに掲げ、ヘルシー志向の宅配弁当サービスを立ち上げた。
創業メンバーは、田中氏を含めて全員IT関係の出身者で食品業の経験者はゼロ。経験値の不足は、すでに十分な製造ノウハウを持つ食品工場の買収などで補い、徐々に知識を習得していった。
サービス開始当初は「ヘルシー」「低糖質」などのキーワードから、女性ユーザーがメインになると思われたが、野原氏は「実際には男性ユーザーが予想より多く男女比率は半々。とくに単身世帯の男性から支持を受けているようだ」と話す。ユーザーの年齢層は幅広いが、ボリュームゾーンは20〜40代で、中でも30代が全体の3割強を占めている。利用頻度では「月2回、10食プラン」がコアで、夕食としての需要が約7割だ。
これらのデータからは、仕事などで忙しく栄養バランスに気を配った食事や自炊が難しいものの健康は気になる、という現代人の意識が読み取れる。また、ナッシュには「チリハンバーグステーキ」「にんにく醤油から揚げ」などボリューム系の献立も定番メニューとして揃えている。こういった通常であればカロリーが気になるメニューも、罪悪感少なく食べることができることも魅力の一つと言えそうだ。
もう一つ、「意外な需要がある」と小川氏は話す。それは高齢になり食事の準備に大変さを感じるようになった親世代への、子世代からのギフトとしての需要だ。冷凍・冷蔵に関わらず、宅配弁当といえば従来は高齢者をターゲットにしたサービスが多かった。ナッシュは現在ウェブ広告などでのマーケティングを主としているため、本来であれば高齢者には情報が届きにくいが、子世代を経由するという予想外の形で高齢世代にも届けられているわけだ。