Uber Eatsが全国展開に本腰の「ピック・パック・ペイ」 急拡大の理由と今後の展望とは
Uber Eats Japan(東京都/中川晋太郎代表、以下ウーバーイーツ)は、食品スーパーなどの小売店と協業し、配達員が注文商品のピックアップ・購入から袋詰め、配達までを担うサービス「ピック・パック・ペイ(以下、PPP)」の全国展開を進めている。この取り組みは一部地域で先行導入されており、現在は対応エリアの拡大とともに、協業先の小売店の業態も多様化しつつある。今後は小売店とのデータ連携を強化し、サービス品質の向上をめざす考えだ。
イオン系食品スーパーを中心に導入が広がる
ウーバーイーツは、2016年に開始した飲食店の料理を自宅などに届けるフードデリバリーサービスを軸に、国内で事業を拡大している。現在、加盟飲食店は12万店以上、配達パートナーは約10万人に上る。19年からは、小売業が店舗で扱う食料品や日用品を対象とした即時配送サービスを開始し、コロナ禍で需要を取り込み大きく成長した。24年は、食料品・日用品に限らずサービス全体で売上高が対前年比で倍増するなど、成長を続けている。
そして24年6月には、配達員が店舗で注文商品を売場からピックアップし、袋詰めや会計も行ったうえで顧客に届ける新サービス「ピック・パック・ペイ(PPP)」を開始した。顧客は買物代行サービスとして利用できる一方、食品スーパーなど小売店側にとっては、専任スタッフや追加人員を配置せずにオンライン宅配を導入できるという利点がある。人手不足に直面する店舗でも売上の上積みが期待できるほか、仕事や親族の介護などの事情で来店できない顧客の需要を取り込める。
すでに世界では米国やオーストラリアなど、世界で6万店以上の加盟店がPPPを導入しており、日本ではまいばすけっと(千葉県/岩下欽哉社長)を皮切りに、イオン東北(秋田県/辻雅信社長)、マルエツ(東京都/本間正治社長)、ビッグ・エー(東京都/打海直也社長)といったイオン系の食品スーパーを中心に導入が進んでいる。
ウーバーイーツは今年に入り、PPPの全国展開を本格化。最近ではユニー(愛知県/榊原健社長)や文化堂(東京都/山本敏介社長)なども導入し、2025年4月からはフジ(広島県/山口晋社長)でもサービスの展開を始めた。
PPPを推進するリテール事業部ディレクターの野村佳史氏は、「オンライン宅配に対応したいが、人手不足などの理由でピッキングや配達を自社で担えない小売店にとって、PPPは参入のハードルを大きく下げるものだ」と導入のメリットを説明する。

一方で、ネットスーパーを自社で運営し、使用する端末や業務オペレーションを自社仕様で統一したいと考える小売店も一定数存在する。そうしたニーズにも応えるため、ウーバーイーツは、従来型の配送サービス(店舗スタッフが商品をピッキングし、配達員が届ける方式)についても、引き続き提供を続けていく方針だ。さらに、昼間は小売店のスタッフが商品をピッキングし、店員が少ない夜間はPPP方式に切り替える「ハイブリッド(複合)モデル」の需要もあるとみて、導入の準備を進めているという。