「コロナでも化粧品は売れる」を体現した「@cosme TOKYO」の顧客体験とは?
まず、「@cosme TOKYO」の世界観をスマホ上でも体感できるバーチャル店舗を導入。「@cosme TOKYO」の店内を歩き回り、商品情報をAR(拡張現実)で確認できる仕掛けで、全国どこにいても「コスメの聖地」にアクセスすることができる。バーチャル店内の広告ジャックなど、バーチャル店舗ならではの演出も可能だ。
また、目下力を入れているのが「@cosme TOKYO」をはじめとするリアル店舗の美容スタッフによるオンラインでの情報発信だ。OMO支援ツール「スタッフスタート」を活用し、スタッフがECサイト上でレビューを投稿。さらに人気YouTuberとのコラボレーションなども積極的に行い、スタッフのメディア露出を増やしている。「あの〇〇さんのカウンセリングを受けてみたい」とユーザーの来店動機にもなるスタッフも出てきている。
その美容スタッフのカウンセリングを、オンラインで受けられる「オンライン接客」や、ライブ配信などにも力を入れている。ある地方の美容スタッフのメイクを、まったく異なる地方のユーザーがECサイトで見て気に入り、オンライン接客を受ける――こういったユーザー体験がまもなく実現しようとしている。
「店頭の美容スタッフは、知識、技術、接客力含めて本当にプロ。彼・彼女たちのスキルと経験を活かせるフィールドを、これからは一店舗だけでなくオンラインにもどんどん広げてもらおうと考えている」
「どこにでもあるもの」を「どこにもない売り方」で売る
@cosmeの美容スタッフは、階層別に綿密に組まれた研修を受講することが必須で、本社オフィスでは毎日のようになんらかの研修プログラムが行われているという。DXに取り組むからこそ、こういった「ヒト」の持つアナログな接客やカウンセリングの価値がそのギャップからか、より重要視されているのだ。
「データももちろん重要だが、リアルとネットをつなげる真の主役は、美容スタッフ。その『ヒト』の価値を上げていくための教育投資は、DXが進み、顧客接点が増えるからこそ、より重要性を増してくる」
@cosmeのDXを推進する上で遠藤氏が強調するのは「テックタッチ」と「ヒトタッチ」のバランス。ユーザーから見えない部分は「テックタッチ」で効率化を徹底する。お客から見える世界は、「ヒトタッチ」の持つ非効率な価値を最大化する。「ユーザー体験」を起点に、「テックタッチ」と「ヒトタッチ」のかけ算を最大化する方程式を考え続けている。
「コロナ禍で化粧品が売れなくなった」などとよく言われる。しかし、売り方やユーザー体験は、アイデア次第でいかようにもデザインできる――そのことを、多くの人でにぎわう「@cosme TOKYO」ほど、説得力をもって示してくれるものはないだろう。
「私たちが販売している商品そのものは、我々の店舗でなくとも同じものを買うことができる。私たちは『どこにでもあるもの』を、『どこにもない売り方』で売っている」
「どこにでもあるもの」を、いかに「どこにもない売り方」で売れるか――「DX」デジタル戦略で問われるべきはテクノロジーではなく、その覚悟なのだ。