「コロナでも化粧品は売れる」を体現した「@cosme TOKYO」の顧客体験とは?

堀尾 大悟
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10年前にメディア・EC・リアル店舗のID連携を実現

しかし、「@cosme TOKYO」が真にめざしているのは、このリアル店舗が提供する価値にとどまらない。その本丸は「リアルとネットの融合」にある。ユーザーがネットとリアルを行き来しながら買い物を楽しむ、たとえば次のようなカスタマージャーニーのイメージだ。

  1. SNSで化粧水の情報を見た顧客が気になり、店舗に来店
  2. 店頭で化粧水をテストし、スタッフからカウンセリングを受けるが、購入はいったん検討
  3. その後、@cosmeアプリに化粧品サンプル配布の通知が届き、サンプルを受け取る
  4. アプリでもオンラインでカウンセリングを受けながらサンプルを使用するうちに納得度が高まり、アプリから化粧水を購入
  5. 購入後もアプリに化粧水の使い方やキャンペーンについて案内が来るほか、1か月後には再びオンラインでカウンセリングを受けられるので、さらにエンゲージメントが高まる

「リアル店舗には、化粧品を実際に見て、試して、カウンセリングを受けられる魅力がある。一方で、ネットにはどこにいても商品を購入できる利便性がある。それぞれの魅力をかけ合わせて、どうすればユーザー体験の価値が最大化されるか、という観点からリアルとネットの融合を考えた」(遠藤氏)

遠藤進氏
アイスタイルのマーケティングを牽引してきた遠藤氏。小売のDX化、化粧品EC市場の拡大等により、益々その役割は大きくなっている。

リアルとネットを結びつけるカギが「データ」だ。店内のスタッフが接客・カウンセリングした内容は、共通の「カウンセリング台帳」に入力。カウンセリング台帳に蓄積されたデータが共有されることによって、リアル店舗でカウンセリングを受けたユーザーがその商品をECで購入する、さらにECで購入した商品を使用し、リアル店舗でカウンセリングを受ける、といったリアルとネットを行き来するシームレスなユーザー体験を可能にした。

同社では約10年前年には、口コミサイト「@cosme」・ECサイト「@cosme SHOPPING」・コスメショップ「@cosme STORE」の、3者間のユーザーID連携を既に実現している。ユーザーから寄せられる膨大な口コミをデータ化し、共有し、ECや店舗の運営に活用していく取り組みは、コロナ禍のはるか前に始まっていたのだ。

@cosmeDXを一気に加速

創業以来、メディア・EC・リアル店舗の3つのビジネス軸を展開する唯一無二のビジネスモデルを確立し、コスメ市場において不動のポジションを築いてきた@cosme。一方で、「果たしてこれでいいのだろうか、という疑問はずっと持っていた」と遠藤氏は当時を振り返る。

「それぞれ単体ではうまくビジネスを拡大してきた一方で、リアルとネットの融合という観点では、まだまだできることがあるはずだと考えていた」からだ。

ネットでの体験がリアルにつながる。リアルでの体験がネットにつながる。双方をより高次元で融合させることで、新たな顧客体験を想像できるはずだ――その、リアルとネットがシームレスにつながる新たなユーザー体験を実践する“実験場”こそが「@cosme TOKYO」なのだ。

リアル店舗でなければ体験できないテスターバーもオンラインからオフラインへの集客につながる

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