医師が教える小売業の現場で行うべきコロナ禍のメンタルケア ポイントは「共感」と「正しい情報」
経営トップからの情報発信が従業員の不安を軽減する
――実際に、感染の不安を抱えながら日々働いている接客スタッフへは、どのような精神的ケアをすべきでしょうか。
梅田 パーテーションを置いたり、消毒をしたりという具体的な対策で安心感を持ってもらうことも大切ですが、トップからのメッセージも重要です。コロナに関する情報はとても錯綜しています。同じスタッフ同士でも、情報をたくさん持っている人とそうでない人がいるし、その情報が正しいとは限らない。だからこそ、全スタッフに向けて、「うちの会社はこういう対策をやります、これによって感染リスクはここまで下がります、みんなで力を合わせてできる対策を進めていきましょう」というような正しい情報をメッセージとして発信すると良いと思います。加えて、この情報が隅々までいきわたることが大切です。こういう発信によって、現場のスタッフが「気にしてもらえている、気遣ってもらえている」と感じられることが安心につながるのではないでしょうか。
また、コロナに対する捉え方には個人差があり、当然不安の感じ方にもバラツキがあります。管理職の方々は、こうした不安感の個人差もわかっているからこそ、気遣いからつい「大丈夫ですか?」と聞いてあげたくなってしまうのですが、実は、「大丈夫?」と聞かれても、人は反射的に「大丈夫です」とだけ返してしまうことが多かったりもします。現場の人たちに問いかける際には、「最近、どうですか?」という具合に、Yes-Noの回答にならないような聞き方へ変えてみることで、本音を打ち明けてくれるようになるかもしれません。また、不安が強そうな人や普段と様子が違うなと感じる人がいれば、ゆっくり時間をかけて話してみるとよいでしょう。
――正しい情報発信とのことですが、コロナに関する情報が世の中にあふれている中で、どうやって信頼性の高い情報を見つければよいでしょうか。
梅田 コロナはまだまだ現在進行形の病気で、日々情報がアップデートされていきます。重要なのは、一つの情報源に頼りきってしまわないということです。面倒でもいくつかの情報を見比べてみて、複数に同じことが書いてあればどうやらこれは正しそうだ、という総合的な判断ができると良いですね。私も、情報を発信するときには、WHO(世界保健機関)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)、厚生労働省、各学会の情報など、複数の情報を確認するようにしていますから。先の話とも重複しますが、やはりスタッフ一人ひとりがこうやって情報の正しさを判断するのは大変ですから、本部の方とか、管理職の方がまとめて発信してあげるのが効果的ですね。