[東京 22日 ロイター] – 神妙な面持ちで18日の決算会見に臨んだソフトバンクグループの孫正義会長は、1兆4000億円という過去最大の最終赤字を印象的なスライドで総括した。「コロナの谷」に転落する一角獣(ユニコーン)を描いたイラストだ。
孫会長のプレゼンテーションは、数字とグラフばかりの資料を用いる日本企業的スタイルとは異なる。どちらかと言えば、米アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏のやり方に近い。
ときに聴く者の笑いを誘うプレゼンテーションの中で映し出されるスライドは、フリーキャッシュフローや配当を説明する図表を織り交ぜながら、この事業家の信条をうまく表現している。
例えば、金の卵を産むガチョウを描いたスライド。耐え忍んだ者には報いがあることを表現している。そして孫会長は、豆腐を100丁、200丁と大量生産するかのごとく、企業価値を100兆(円)、200兆(円)と増やしていきたいと語る。
「日本企業のトップのコミュニケーション手法としては異例だ」と、PRコンサルタントとして経営者にアドバイスをするボブ・ピッカード氏は語る。孫氏のようなやり方はマスコミに大きく取り上げられやすく、ソーシャルメディアでも話題になりやすいという。
さきごろツイッターを再開した孫会長は「失敗の原因は外部ではなく全て己れにある。それを認めなければ前進はない」と投稿した。それでも孫氏流のプレゼンテーションは、自身のアイデアを広く訴え、前進させる上で重要な手段であることに変わりない。
決算会見で使ったスライドの中には、有望な未上場のベンチャー企業を意味する色とりどりのユニコーンが駆け上がっていく様子が描かれているものもあった。
テクノロジーに対するユートピア的理念を伝えるために、孫会長が用いるのはスライドだけではない。「情報革命で人々を幸せに」という、日本企業が好んで使う経営スローガンも掲げている。
しかし、孫会長の理想は、新型コロナウイルスが世界経済とソフトバンクの出資企業を直撃したことで、厳しい現実に直面している。
孫会長は18日の決算会見で、翼を広げたユニコーンが「コロナの谷」から飛んでいくスライドも披露した。小さな文字で免責事項が書かれたプレゼンテーション資料の物語は、単純すぎるきらいがあると、ピッカード氏は指摘する。
「孫会長の言うことが真剣に受け止めてもらえず、風刺画にされてしまうリスクがある」と、ピッカードは語る。