「意識」の前に「行動」を革新する! 改めて学んでおきたいユニ・チャームの「SAPS経営」

千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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本棚に仕舞ってあった『ユニ・チャーム SAPS経営の原点 ―創業者高原慶一朗の経営哲学―』(ダイヤモンド社2009年刊:二神軍平著)を改めて読んでみた。

「SAPS経営」とは

 「SAPS」とは、Schedule、Action、Performance、Scheduleの頭の文字を続けたもの「SAPS経営」とはユニ・チャーム創業者の故高原慶一朗氏がトヨタ自動車やP&G、ボストンコンサルティング グループなど、多くの企業から学び取り、ユニ・チャームグループの原理原則として集約した哲学を経営モデル化したものだ。 

 行動予定を立て(=Schedule)、予定を実行し(=Action)、効果を省察し(=Performance)、達成感や反省点を全員で共有して次の計画に生かす(=Schedule)という週単位のマネジメント・モデルの構造を表している。

 従来、自己革新のステップは、「意識革新」→「行動革新」→「能力革新」→「習慣革新」の順で進むと考えられてきた。平たく言えば、意識が変わると行動が変わり、行動が変わると能力アップが図られ、能力アップが図られると習慣が変わり、以前の自分とは異なる仕事のやり方が普通にできるようになるということだ。

 しかしながら、「SAPS経営」では、「そんなに簡単に意識を革新できるのであれば、問題が深刻化する前に何らかの手を打てるはず」と従来型のステップを否定し、「意識革新」の前に「行動革新」を置くという立場を採る。

結果は強制できずとも行動は強制可能

 「野球チームの監督が選手に『三割バッターになれ』と言っても、だれもがなれるわけではありません。しかし、『毎日100回素振りをしろ』と言えば、当人のスキルや能力に関係なく、意志さえあればだれでもできます」。

 結果は強制しても出すことはできないが、行動は強制が可能だ。だから、筆者の二神軍平さんは、当時社長を任されていた企業で経営者が行動のスケジュールをつくり、代わりにすべての数字責任を負った。

 従業員は、経営者の指示を完全実行するだけ。実際、営業社員は売上ではなく、週単位で商談の訪問先と訪問回数で管理した。

 もちろん単行本を発行しているのだから、効果はてきめんと現れたわけだ。

 さて、二神さんは1968年に大成化工(現在のユニ・チャーム)に入社以来、53年にわたって、同社創業者であり、故高原慶一朗氏を人生の師と仰ぎ、薫陶を受け、実際に経営にあたってきた。

 創業者の意志を次世代につなげ、100年企業、200年企業となるために参考にしたい珠玉の一冊だと改めて実感した。

記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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