一見違いがわからづらい商品も売り切る、ジャパネットの“接客販売”の妙
日本通信販売協会(東京都/粟野光章会長:JADMA)、によると、2021年度の通販の売上高は、対前年比7.8%増の11兆4600億円となった。直近10年の平均成長率は8.5%、マイナス成長を記録した1998年以来、23年連続で市場は拡大している。
通販市場で異彩を放つジャパネットの存在
アマゾン・ドット・コムが独り牽引する感は否めない通信販売市場ではあるが、その中で異彩を放っているのが、ジャパネットたかたホールディングス(長崎県/髙田旭人社長:以下、ジャパネット)だ。
創業は1986年で、髙田明氏が長崎県佐世保市に写真の撮影・現像、カメラを中心とした商品の販売を行う「株式会社たかた」を設立したところから始まる。
それから35年。2021年12月期の売上高は対前期比4.2%増の2506億円。アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)の230億7100万ドル(=約2兆5000億円)には遠く及ばないが、2012年12月期の1170億円から着実に成長し、2代目社長が舵を取りながら、新たな成長期を迎えている。2019年には「通信販売事業」に次ぐ、2番目の柱である「スポーツ・地域創生事業」を立ち上げた。
“接客販売”の強さ
さて、私が考えるジャパネットの強みは、商品選択と“接客販売”にある。
実際、高田旭人社長は、「通信販売事業が拡大していく中で、ジャパネットの存在価値は、良いモノを買いたいけれども、世の中に溢れる商品の中から選択するのは大変だという方に、 『ジャパネットとして商品やサービスにこだわって見つけ出し、その魅力を徹底的に磨きあげ、世の中に伝えていくこと』だと確信しています」と話している。
TVの画面またはラジオを通じて、自社のフィルターを通じて選んだ商品の特長を懇切丁寧に教えてくれる。メディアの向こうにいる店員は、しつこく付きまとうこともないので、安心して耳を傾けていられる。
商品が自分に合わなければ、メディアのスイッチを切ればいいだけだし、“接客販売”でも三密の状態は回避できる。つまりは、お客にとって非常に都合のよい店員さんが存在するのである。
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは
この連載の一覧はこちら [1799記事]
関連記事ランキング
- 2020-03-23橋田壽賀子脚本の名作『おしん』のモデルといわれる2人の女性スーパーマーケット創業者
- 2022-08-24人々を悩ませる「先入れ先出し」と「後入れ先出し」
- 2020-02-28日本最大の釣り具チェーンを育て上げた”釣り業界の革命児”、上州屋・鈴木健児物語
- 2020-02-06スパイ教育を受け、戦後小売の道に 一大勢力を築いたバロー創業者、伊藤喜美物語
- 2020-04-16無印良品、ロフト、パルコ…セゾンを作った男、堤清二物語
- 2020-05-01オーケー、テンアライド、セコム 起業家兄弟を育てた父・飯田紋治郎の教え
- 2021-02-18ホームセンターの“同質化”はなぜここまで進んだのか?好調企業の共通点は革新と差別化
- 2024-08-02日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り
- 2019-08-30人手不足はいよいよ深刻化 IT武装化に当たって留意したいこと
- 2019-11-29「スーパーは10店舗くらいが効率良い」 バロー田代正美社長が試行錯誤する「脱チェーンストア」マネジメント!