長野発、食のSPA企業サンクゼールがECプラットフォーム事業に着手した理由
健康志向にとらわれず、伝統の食品は“そのまま”販売する
リアル店舗では、「サンクゼール」「久世福商店」ともにコロナ禍で売れる商品に変化が起きており、酒類、珍味、冷凍食品、ギフトの4カテゴリーがとくに伸長している。SMなどほかの食品小売店と同じく、外出控えによる家飲み需要を受け、酒類とそのおつまみとなる珍味の売上が伸びた。ギフト商品については、「ちょっとした手土産などの『プチギフト』の需要が伸びており、こだわり商品を取り扱う当社の店舗が支持されている」(山田氏)という。
冷凍食品については、以前から業務用の商品を一般家庭用に販売する取り組みを7年ほど前から続けていた。コロナ禍では備蓄需要の高まりも相まって売上が伸長している。「業務用の冷食は開発が進んでいるが、一般家庭用に売られているものは少ない。レストランで使われているような商品を家庭にもっと広めていきたい」(山田氏)。魚や肉のほか、スイーツの冷凍食品など、業務用の商品を家庭用の数量にアレンジして展開したい考えだ。
コロナ禍で伸長している健康志向の商品も「久世福商店」では取り扱っているが、近年ではイオン(千葉県)系列の「ビオセボン」や、ライフコーポレーション(大阪府)の「ビオラル」など、健康志向のこだわり商品を取り扱う小売店が増えている。しかし、山田氏はこれらの店舗は直接競合しないとみている。
「安心・安全はもちろん大事だが、最も追求すべきはおいしさだ。珍味や地方の変わった特産品などは、おいしいが塩分が多いなど必ずしも健康によいわけではない。もし塩分を抑えれば昔からのよさが失われてしまう。伝統の食品は“そのまま”販売したい」(山田氏)。その一方、国産大豆を使った減塩しょうゆなども取り扱うなど、バラエティの豊富さが重要だという。
今後もサンクゼールは、商品の企画・開発から調達、販売に至るまでを自社で展開する食のSPA企業であることを強みに、こだわり商品の追求を継続していく考えだ。