本杉吉員社長が語る、いなげや&U.S.M.H の一員としての成長戦略
24年11月、国内最大の食品スーパー(SM)グループ、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/井出武美社長:以下、U.S.M.H)の一員となったいなげや(東京都)。同社は近年、既存店活性化に注力し業績を回復。25年は約7年ぶりに高質フォーマット「ブルーミングブルーミー」をオープンしたのをはじめ新規出店が続き、勢いに乗る。
大きく変化する経営環境の中、今後どのように舵取りをしていくのか、本杉吉員社長に話を聞いた。
24年度改装14店!顧客基点の売場づくりで堅実な成長へ
来店客数増へ全面改装に注力!
──足元の業績についてどう評価していますか。

●1964年3月20日東京生まれ。
86年3月明星大学人文学部卒業後、
同年4月いなげや入社。
2011年6月いなげや執行役員に就任。
12年10月営業企画本部長、
14年9月グループ人事本部長を経て、
16年6月取締役販売本部長に就任。
18年7月商品本部長、
19年10月営業本部長(兼務)。
20年4月代表取締役社長に就任(現任)。
本杉 24年度決算は11カ月分しか算出していないため(※)減収減益ですが、前年同期比(4月~翌2月)では増収増益とすることができました。
※:24年11月のU.S.M.Hとの統合で、決算期を3月から2月に変更している。
この結果は、ここ数年行ってきた顧客基点の改装の成果だと考えています。当社は、コロナ明け(23年度)から店舗ごとの来店客数、部門ごとの客数、全店の来店客数を重要な指標として位置づけ、「客数を伸ばすこと」を第一のKPI(重要評価指標)かつKGI(重要目標達成指標)としてきました。改装店舗数を抑えてでも1店当たりの投資金額を増やし、年間8店舗を基準として既存店の全面改装を行っています。
規模が大きい旗艦店のリニューアルに着手すると、2~3週間の間営業ができなくなり、業績面の影響も大きくなりますが、改装を終えれば客数は伸びていきます。
また、改装時に導入した新しい商品・カテゴリーをほかの既存店に移植するというサイクルも生まれてきました。そうした中で23年度は10店舗、24年度は14店舗を改装し、その結果が売上高として数字に表れたのだと思います。
──20年に社長に就任されましたが、とくにコロナ禍を経て消費トレンドは大きく変化しました。どのように振り返りますか。
本杉 コロナ禍では内食需要が高まり、総菜と冷凍食品の売上が大きく伸長しました。外食機会が制限された分、お客さまからは高質な商品を求める声が多くあったように思います。
一方、コロナ後は外食や旅行など、いわゆるコト消費の需要が増えた一方、食をはじめとするモノ消費が減ったことで買い上げ点数が落ちました。さらに外食需要の復活によって、和牛をはじめ、高質な商品の購入点数も減少しました。
核となる売場を創出テーマは「素材と総菜」
──消費動向が変わってきた中で、どのような売場づくりを志向していますか。
本杉 新店でも改装店でも共通して「素材と総菜」というテーマを掲げ、しっかりとゾーニングすることでお客さまが買いやすい売場をめざしています。
たとえば、25年6月に新規出店した「保谷駅前店」(東京都西東京市)ではダブルコンコースを採用し、総菜から始まる生鮮・総菜一体型レイアウトとしています。買い上げ頻度が高い青果と総菜を入口すぐに配置することで利便性向上を図りました。

また、25年4月にスクラップ&ビルドでオープンした「川崎中野島店」(神奈川県川崎市)は入口に青果、その奥に鮮魚と総菜を隣接させ、中央に新規導入の「鮮魚鮨」コーナーを配した売場をつくりました。
加えて、新店ではバックルームの配置を見直し、従業員の移動を少なくなるようにしています。スペースに余裕がある店舗では生鮮部門の加工場を1カ所にまとめるなど、投資コストを抑制しました。
また、売場中央部に設置すると視界を妨げることになる冷凍食品の什器を壁側に寄せるなど、お客さまが見やすい売場をつくるため細部にこだわったレイアウトを採用しています。

──「目玉の売場をつくる」という点では、具体的にどのような商品を核にしていますか。
本杉 たとえば青果は