ファンケル代表取締役社長 島田 和幸
無添加化粧品、健康食品を軸に小売業と連携し売上拡大をめざす
1982年、無添加化粧品を完成させたファンケル(神奈川県)。その後、サプリメントなどの健康食品分野にも乗り出し、事業を拡大させてきた。おもな販売チャネルである通信販売や直営店舗に加えて今、強化しているのが一般小売業の流通チャネルである。今年4月、新社長に就任した島田和幸氏に成長戦略を聞いた。
世の中の「不」を解消するものづくり
──ファンケルが無添加化粧品を開発したねらいは何ですか。
島田 今から40年近く前、化粧品による肌トラブルが社会問題になっていました。原因は、防腐剤や香料など化粧品に含まれる添加物です。
「なぜ、美しくなるための化粧品が女性の肌を傷つけているのか」と憤りを感じた創業者の池森賢二は、肌に負担となる添加物をいっさい入れない化粧品をつくろうと思い至りました。試行錯誤の末、ついに1982年、肌本来の美しくなろうとする力を引き出す「無添加化粧品」が誕生しました。
──通信販売からのスタートですが、これには理由がありますか。
島田 無添加化粧品ですから、当然、防腐剤は入っていません。そのため、つくりたての無添加化粧品を新鮮な状態でいち早くお客さまのもとに届けるために、通信販売という方法を採用しました。しかしながら、品質保持の観点から密封容器に詰めて使いきりサイズでご提供するため、わずか5mlのバイアル瓶(ガラス製容器)に詰めて発送していました。化粧品の常識を考えれば、異例の容器、容量でした。
現在は技術開発が進んだこともあって、環境問題に対応したPET樹脂の完全密封容器を採用し、お客さまが開封されるその瞬間まで品質を守っています。とはいえ、品質を保ち、新鮮なうちに使っていただける量には限界があるので、一般的な化粧品に比べれば小容量で、化粧液・乳液では30mlです。
また、ファンケルの化粧品にはすべて製造年月日を明記しています。いつつくられたものなのかを、きちんとお客さまにお伝えするためです。これも一般的な化粧品とは一線を画す特徴といえるでしょう。
さらに、開封後も品質を維持した状態でお使いいただける「フレッシュ期間」を独自に制定しています。化粧液・乳液なら60日間です。そのため、各商品にはいつ開封したかをお客さま自身が記入しておくための「フレッシュシール」を同封しています。
無添加だからこそ、安全・安心はもちろんのこと、効果の高さにもこだわり、商品をお届けしています。
──健康食品事業を展開するようになったのはいつ頃からですか。
島田 もともと創業者の池森には「正義感をもって、世の中の不安や不便、不満などの『不』を解消したい」という強い想いがありました。創業した1980年代、健康食品といえば高価なイメージがあり、誰もが手軽に購入できるものではありませんでした。そこで、「高品質・低価格」というコンセプトのもと、当時日本ではまだ馴染みのなかった「サプリメント」という言葉を使用して、94年から通信販売を開始しました。これにより、サプリメントは一気に身近なものとなったのです。
その後、99年には発芽玄米事業、2000年には青汁事業も手がけるようになり、事業を拡大していきました。