タチヤ元社長が進めるバローの生鮮強化改革の成果と次なる打ち手!森克幸専務が語る!
バローホールディングス(岐阜県/田代正美会長兼社長)の中核企業として、2府10県で約240店舗の食品スーパー(SM)を展開するバロー(同/田代正美社長)。同社は近年、生鮮食品の強化を軸に、目的来店性を高めた店舗フォーマットの構築に取り組んでいる。その成果と今後の展望について、現在タチヤ(愛知県/坂本勝社長)の会長でバロー専務取締役も務める森克幸氏に聞いた。
商品の“入口”となる仕入れを重視
──コロナ禍の1年をどのように振り返りますか。
森 感染拡大当初は、本部も現場の従業員も目の前で起こることに対応するだけで精いっぱいでした。しかし、次第にお客さまもわれわれもコロナ禍に慣れ、約1年が経った今では状況は落ち着いており、昨年の今頃のようにパスタや即食麺など備蓄に適した商品が欠品することはなくなりました。現在は、ほとんどコロナ前に近い状態で業務を継続することができています。
ただ、この1年は成功も失敗もたくさん経験しました。たとえば、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などの連休の時期には、例年と同じものが売れるのか、消費者の動向はどのように変わるかなど、見極めが難しい部分もありました。
また、コロナ禍ではネットスーパーの利用も増えました。当社が展開している事業所向けのネットスーパー「ainoma(アイノマ)」は、登録事業所の従業員が注文した商品を勤務先まで届けるサービスで、現在、41カ所の事業所にご利用いただいています。2020年5月にはこのサービスを拡張し、ドライブスルーで注文した商品を受け取れる「ainomaピックアップ」も開始しました。今後もニーズがあると見込み、少しずつ成長させていきたいと考えています。
──21年3月期のバローの既存店売上高は、20年4月から21年1月までの累計で対前年同期比7.4%増と概ね好調です。これをどのように評価しますか。
森 われわれはコロナ以前から、来店動機となる強い商品・カテゴリーを持った「デスティネーション・ストア」をめざし、既存店の改装を中心に新たなフォーマットの構築に取り組んできました。この1年の業績は、この成果に加えコロナ禍の特需が重なった数値だと認識しています。そのため、デスティネーション・ストアの効果が本当に明らかになるのは来期(22年3月期)以降となります。
──デスティネーション・ストアでは、生鮮強化を掲げています。店舗数が多いため、個店仕入れをするタチヤとは異なる強化の方向性が求められます。
森 生鮮食品を強化するうえで、商品の“入口”となる仕入れをとくに重視しており、間口を広げて新たな市場や取引先を開拓しています。たとえば、仲卸業者については、「ここのネギは品質が高い」など、特定の食材やカテゴリーに強みを持っているところもあります。そのような業者もうまく使っていきたいと考えています。
また、バローの広大な店舗網と自前の物流網も生かしていきます。たとえば、名古屋市内の市場で仕入れた商品は、以前は北陸地方の店舗であまり展開していませんでした。しかし今では、仕入れ先と店舗が離れていても、お客さまにとって価値のある商品で、ある程度の数量を確保できれば、自社物流を活用して配送しています。