アングル:コロナで変わるXマス商戦、臨時採用は接客から倉庫に
[14日 ロイター] – 北米と欧州の小売業では例年この時期、何十万人もの大勢の季節従業員が雇われ、贈り物用の商品を梱包したり、クリスマス用のディスプレーを支度したり、まだ用意していないクリスマスプレゼントをあわてて買いに押し寄せる顧客を手伝ったりするものだ。
しかし今年はコロナ禍でオンラインでの買い物が記録的な量に上っている。このため、季節従業員の業務内容も店頭の接客から、倉庫や配送へと劇的にシフトしている。エコノミストによれば、欧米では既に小売業労働者が数百万人も解雇されている中で、そうした残された小売業雇用への争奪戦も激しくなっている。
コンサルタント会社、チャレンジャー・グレイ&クリスマスが米労働統計局のデータを集計したところによると、今年11月は、米国の小売業での接客の求人が30万2100件と、前年同月の46万6400件から約3分の2に減った。
百貨店のメーシーズは今年、年末商戦用の雇用を2万5000人と、昨年の8万人から減らした。5月に連邦破産法11条の適用を申請したJCペニーは、11月初めに救済されて辛くも廃業を免れたが、年末の臨時採用数は1700人。昨年の3万7000人から激減している。
その一方で、職探しサイトのグラスドアの11月のデータによると、米小売業の店頭での雇用への応募活動件数は前年同期比で34%増えていた。
欧州でも、求人が減っている一方で求職は増えている。アズナのデータでは、英国の季節従業員の求人件数は11月、前年同月から3分の1減って1万3600件だった。
CVライブラリーによると、英国では小売業の店頭接客スタッフの求人件数が前年比で60%減ったが、これに対する1件当たりの求職側のクリック数は2倍に増えた。ドイツと英国では、学生向け求人サイト、スチューデント・ジョブズの担当者に対し、企業から返信が来ないことに不満を募らせた学生からの問い合わせが増えている。企業に応募が押し寄せているからだ。
インディードの英国エコノミスト、ジャック・ケネディー氏の最近のリポートによると、英国では季節労働の求人1件当たりに反応するクリック数が昨年に比べて3分の1ほど急増した。
ケネディー氏は「失業が増えている中、求職者はクリスマス用の仕事が一時的な命綱になると考えているのかもしれない」と記した。
小売業の新世界
観光バス会社で働いていて4月に解雇されたアラバマ州のカイラ・フレデリックさん(31)は11月、人生初めての季節労働に携わるようになった。地元の衣料品店の倉庫での仕事だ。オンラインの注文を受け、在庫を取り出し、タグ付けなどの作業にあたる。
「こんなに長く解雇されたままになるとは予想していなかった。この仕事があってありがたい」と話す。
英郵便事業のロイヤル・メールは今年、季節従業員の採用を3万3000人と、昨年の2万人から増やした。米労働統計局のデータからは、米配送大手フェデックスも昨年の5万5000人から7万人に増やしていることが分かる。
グラスドアのシニアエコノミスト、ダニエル・ジャオ氏はこうした動きについて、「小売業にとって新たな世界への扉になりそうだ」と言う。「パンデミック中に必要から生まれた現象が恒常化し、今後はクリスマスシーズンは毎年オンラインで買い物をする慣例になる可能性が高い」とみる。
グラスドアによると、配送用トラックの運転手、倉庫作業員、オンライン受注受け付けスタッフなど電子商取引絡みの求人への応募は、米国で前年比120%、英国で45%、それぞれ急増した。
カリフォルニア南部の大学生、オスカー・ジミネスさん(22)は幸運な1人だ。10月に小売店で季節限定の職を得られた。ただ、店頭で接客するのだと思っていたら、そうではなく、店の裏手の倉庫で働いている。応募時の業務内容とは違うが、「注文を受け、建物内を歩き回り、オンラインで購入された品物を探し、店先受け取りか宅配の準備を整える」忙しい毎日だ。
一部のスーパーマーケットも採用を増やしている。英テスコは季節従業員の採用を昨年より2000人増やした。ロックダウン(封鎖)の動向が不透明だったため、学生向け求人サイトへの掲載は例年より1カ月遅かったが、にもかかわらず、サイトのデータによると応募者は昨年の2倍だ。
一方でドイツのスーパー大手、リドルは今年、昨年より40%多い2400人の見習社員を受け入れた。同社と米アマゾン・ドット・コムは需要の急増に対処するため、今年の初めからスタッフを大幅に増やしてきたため、季節労働者を採用する必要性は薄れている。
アマゾンは9月の時点で、年初からスタッフを既に27万5000人増やしたため、米国での季節従業員の採用は昨年の半分の10万人にとどめたと説明している。