MWC見本市中止で広がる波紋、地元経済に打撃 独自対応の企業も
[ベルリン 13日 ロイター] – スペイン・バルセロナで今月開催される予定だった世界最大級の通信関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止が決まった。
ただ、韓国LG電子を皮切りに相次いだ企業の出展見送りを受け、代替プランがないまま取りやめになったことで、多くの関係者が困惑を隠せない様子だ。
MWCの中止により、企業側のマーケティング関連予算に大穴が開いたほか、地元バルセロナは5億ドル相当の経済的な損失を被った。
昨年11万人の来場者があったこのイベントは規模が大きくなりすぎたのではないかとの疑問が浮上している半面、まさに各社が目玉として出展するはずだった最新の通信技術の見せ場がなくなったともいえる。
IESEビジネススクールのマイク・ローゼンバーグ准教授は、新型コロナウイルスのせいで「何万人の人が集うという考えそのものが消し飛んでしまった」と指摘。中国が引き続き新型コロナウイルスへの対応に苦闘している以上、今回の主催団体GSMAが夏に上海で開催する次の大規模会議も実現が危ういとの見方を示した。
こうした中でソニーとノキアは、MWC不参加を表明した後、オンラインで新製品の発表を行った。韓国のサムスン電子は先週、サンフランシスコの別のイベントで、折りたたみ式の新型スマートフォンを披露している。
また仏携帯電話会社オレンジのハモン・フェルナンデス最高財務責任者(CFO)は、出展を計画していた幾つかの同業者から「バルセロナに集まれないなら、パリで会議をやろう」と呼び掛けられたと打ち明けた。
スペイン自体は、今のところ新型コロナウイルスの感染者はわずか2人しか報告されていない。うち1人はカナリア諸島、もう1人はマヨルカ島にいるため、本土に限ればゼロだ。
バルセロナがあるカタルーニャ自治州政府の経済トップもロイターに、MWC中止の決定は尊重するものの、スペインに公衆衛生面で危険はないと強調した。また中止の代償として、現在の契約が切れる2023年以降もバルセロナでMWCを開催するようGSMAに働き掛けていく考えを示した。
一方、肝心の参加企業について、大手は中止のコストに耐えられても、中小企業勢は来年以降の復帰を考え直すかもしれない、とアナリストは話す。
GSMAは来年もバルセロナでMWCを開く方針を打ち出している。それでも事務局長が、出展企業のためにGSMAが加入した保険では新型コロナウイルスのようなイベントは適用対象にならないと認めると、記者団から厳しく追及される場面が見られた。
MWC中止決定に至るまでのGSMAの広報対応も問題視されている。出展見送り企業が続出して、もうすぐ中止が決まろうかという段階でもまだ、メディアに招待状を発送していた。