アングル:中国企業の米上場廃止、そのとき何が起きるのか

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米中貿易のイメージ
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[上海/香港 30日 ロイター] – 複数の関係者によると、トランプ米政権が米国の証券取引所で中国企業に上場廃止を強制することを検討中だ。これは米中の緊張を一層高める上に、一部の大手中国企業を混乱の渦に陥れかねない。

上場廃止が実現するかどうかは分からない。ただ2人の関係者は、こうした考えは中国企業の対米投資を制限しようという幅広い取り組みの一環だと指摘した。また関係者の1人は、トランプ政権が中国企業の活動について安全保障上の懸念を強めていることが動機だと説明した。

中国企業の上場廃止はどれほど重大な意味を持つのか

市場参加者は、これほどの規模で上場廃止を強制するのは前代未聞になると話す。2月時点で、ナスダックとニューヨーク証券取引所(NYSE)、NYSE傘下のアメリカン証券取引所に上場している中国企業は150社強だ。

その中には巨大企業もいくつかある。例えば電子商取引のアリババ集団と京東商城、インターネット検索の百度の合計時価総額は5000億ドルを超える。

中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)、中国人寿保険といった従来型産業の主要企業の一部も米国に上場している。

どんな影響を及ぼすか

企業の米上場意欲を阻害するとともに、ライバルの取引所にとっては中国企業を誘致する新しく魅力的な機会になる公算が大きい。

具体的には香港取引所やロンドン証券取引所、中国でハイテク新興企業向けに稼働を始めたばかりの科創板などが恩恵を受けるかもしれない。

ジェフリーズのアナリストチームは29日付ノートに「中国企業の上場廃止案は国際的な(米国預託証券)市場に徹底的な打撃を与え、世界中の資金の動脈としての米国の役割が損なわれるだろう」と記した。

新規株式公開(IPO)を手掛けるバンカーは、米国で中国企業の新規上場がしばらくストップすると予想する。こうした企業やアドバイザー、投資家は状況がはっきりするまで動かないからだ。トランプ大統領が来年再選を果たすかどうか見極める向きも出てくるのではないか。

上場廃止をどうやって実施できるかも分かっていない。

話が進んでいくなら、米国に上場する中国企業は、株主から自社株を買い戻す算段を考えなければならなくなる。1つの方法は、別の取引所に上場し、株主に米国上場株と引き換えに新株を交付することだろう、とある株式資本市場バンカーは話した。ただこの計画は株主と企業の双方にとっていくつかのリスクを伴い、同時に手続き面でも相当な難しさがあるという。

強制的な上場廃止案は以前にも浮上したか

個別の上場廃止は別に珍しくない。企業が非公開化を選択したり、別の取引所に移転する場合があるし、取引所は要件を満たさなくなった企業の上場を定期的に廃止している。しかし地政学的な理由で上場廃止を強制するのは極めて異例だ。

ロシアが2014年にウクライナを編入した後で米国がロシアに制裁を科してもなお、一部のロシア企業は米国に上場されたままで取引されている。

一方、少なくともいくつかの中国企業の上場廃止を求める圧力は以前にもあった。

企業統治の確立を目指す団体や政治家などはもう何年も、中国企業の監査に関する情報が欠けていることに不満を表明してきた。6月には超党派の米議員グループが、米上場の中国企業により定期的な監視に従うことを義務付け、それが嫌なら上場廃止にすると定めた法案を提出した。

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