節約志向にどう対処するか? ライフ、イオン、セブンの施策とは
食品小売の記者会見では、節約志向への言及が増えています。各社の24年度上期業績を見ると、増収ながらも営業減益となる企業が多く、人件費が増える一方で粗利率は上がらないというパターンが目立ちます。それも、あえて粗利率を犠牲にして売上を取りにいった結果だったりします。そうせざるを得ないほど価格競争が厳しく、背景には消費者の節約志向があるというわけです。品質と利便性で通してきたセブン-イレブン・ジャパン(東京都)でさえ、値頃感をアピールする昨今。流通大手の現状認識をまとめます。
消費環境は良くても節約志向
ライフコーポレーション(大阪府)の岩崎高治社長は、10月の中間決算会見時も「消費は悪くない」という見解でした。ただ、賃上げや株価の恩恵を受けていない生活者も存在するという留保付きです。また、マクロで見て消費は悪くないからと安心しているわけでもありません。顧客にアンケート調査を実施し、自社の「品質と価格のバランス」評価が低下していると見て取ると、粗利率を抑えて価格対応する施策を取りました。
仕入れ原価の高騰もあって想定以上に粗利率を落とし、上期の営業利益は対前年同期比で1.4%の減益に終わりました。しかし、他社との相対で見れば軽微な方です。岩崎社長は「直近の調査では『品質と価格のバランス』の評価を改善できた。粗利率の抑制は将来につながる投資だった」と総括していました。
イオン(千葉県)の吉田昭夫社長は、決算会見で「マクロの景況感とコモディティの景況感は違う」と語りました。賃上げの恩恵を受けても日常の食費は抑制するし、賃上げの恩恵を受けていない層は買い周り傾向を強めているとの認識です。そうした環境にあって「各社は価格訴求を強めており、原価上昇の中での価格競争になっている」といい、つまりは粗利を確保しづらい状況にあるとしました。
イオングループの対応策は、プライベートブランド(PB)の中でも価格訴求型の「ベストプライス」への傾斜です。ナショナルブランド(NB)より粗利を取れる同ブランドを拡販し、粗利高を追い求めるといいます。「利益貢献の大きい年末年始に備え、ベストプライスによって客数増を定着させたい」(吉田社長)。今から低価格PBで種を蒔き、稼ぎ時の収穫を最大化しようというものです。