ユニクロ柳井正会長が語る 企業のサステナビリティの本質とは
「ユニクロに学ぶサステナビリティ」と題して、今年5月から始まったこの連載も、いよいよ今週の掲載で最終回を迎える。これまでの27本の記事では、30名にのぼるユニクロ、ファーストリテイリングの各担当者あるいは外部パートナーに、サステナビリティの様々な取り組みを取材してきた。今やサステナビリティ先進企業となったユニクロ、ファーストリテイリングも、2001年に社会貢献活動をスタートしてから22年の間、様々な試行錯誤を続けてきたことがわかる。
最終回は、創業社長である柳井正会長に話を聞いた。サステナビリティというテーマを超え、企業として、小売業として、また一個人として、これからの世界をどう生きていくべきか、という示唆に富んだメッセージである。
企業は何のためにあるのか
企業が大きくなっていくと、社会的な影響力も強くなりますが、成長の過程には、原点に返って考えないといけないタイミングがあります。その原点とは「企業は何のためにあるのか」ということです。
企業は何のためにあるのかをを考えていくと、「企業はお客様のためにある」ということに行き着きます。そして、あらゆる「お客様のため」を突き詰めると、「社会全体のためになるような企業活動をする」ということになるのではないかなと思います。
事業を行ううえで最も大切なのは、その事業を通じて、社会を良くしていくことです。サステナビリティとか何とかというよりも、社会にとって良いことをする。そう考えると、自ずとやることが決まってくるでしょう。
ファーストリテイリングの前身である小郡商事を父から引き継いで、自分でやっていくことになったとき、「この会社をどんな会社にしていけばいいのか」と考えました。そして決めたのが、「社会に良いことをする」ということです。当時書いたメモは今も手元にあり、私の商売の原点となっています。
お客様の生活をより良いものに
お客様のためというのは、お客様に服を売るのと同時に、「その服を着ることによってお客様の生活がより良いものになる」ということだと考えています。
ただ単純に、地球環境のためだけに商品を作っても、お客様の生活が良くなるようなものでない限り、共鳴して買ってもらうことはできないでしょう。素材をいくら地球環境に優しいものに変えたとしても、値段が上がったり着心地が悪くなったりするのであれば、作る意味がありません。「それでもサステナビリティだから」と押し通しても、全体にとってプラスになるとは思いません。
また、再生繊維を使用した製品を扱えばサステナビリティブランドと言えるかというと、それを作る過程で実はCO2の排出量を増やしている可能性もあります。短絡的な考えによって、かえって社会の負荷を増すやり方になっていないか、深く考えながら取り組む必要があります。
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