賃金の伸び、焦点に=労働市場過熱、物価押し上げ―米FRB
【ワシントン時事】米労働省が7日に公表した6月の雇用統計では、米国の労働市場の堅調ぶりが改めて示された。求人件数が失業者数を大きく上回る人手不足が続き、賃金の伸びも高水準を維持。足元のインフレは人件費上昇を受けたサービス価格高が主導しているだけに、連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げで過熱気味の労働市場を冷ます必要に迫られている。
統計では、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数が6月は前月比20万9000人増と、雇用の伸びが5月(30万6000人増)に比べ大きく減速した。ただ、FRBは長期的に安定した就業者数の増加幅を「月10万人程度」(高官)としており、依然これを大きく上回っている。
インフレ率は昨年半ばをピークに低下基調にあるが、エネルギー安によるところが大きく、サービス価格は高止まりしたままだ。基調的な物価高圧力が強い中、パウエルFRB議長は「インフレ率が目標の2%に低下することは来年もない」と予想する。 物価上昇率の今後の推移を占う上でカギを握るのが、賃金の動向だ。特にサービス分野は接客など労働集約型の業種が多く、コロナ禍以降の人手不足が賃金上昇を招き、サービス価格を押し上げる構図が続いている。 雇用統計によると、6月の平均時給は前年同月比では4.4%上昇。1年前の5%超からは伸びが鈍化したが、FRBが妥当な水準とみる3%台半ばを依然上回っている。 失業者1人に対する求人は5月時点で1.6件と「売り手市場」のため、人手を確保するには賃上げせざるを得ない状況だ。過度な労働需要を沈静化させるため、FRB内では「より引き締め的な金融政策が必要」(別の高官)との見方が強まりつつある。