日本の繊維産業の明るい未来を壊している犯人は誰だ? 米中「綿の代理戦争」の影響とは
今回はアパレルにとって不可欠な「素材」の話をしたい。ある場所で学生のビジネスコンクールのようなものの審査員が、「ユニクロの服は綿花をやめてポリエステルにせよ」と全く意味不明なことを言っていた。その提言がいかに的外れかを分かっていない人間が評価者になっている様をみて、「ここまで日本人は良いものが分からなくなったのか」と驚いた。実は素材に関して、アパレル業界でも分かっていない人が多いものだ。知っているよ、という人であっても、自信の知識の棚卸しにつかっていただきたい。
実は、この素材が国際間対立の元になり、その根本はSDGsへの無理解が引き起こしていることを皆さんは知っているだろうか。一般消費者の皆さんには素材の良し悪しを正しく理解することが、本当の意味でのSDGsにつながることも知っていただきたい。
世界でもっとも消費量が多い綿花、ここからみえる政治対決
まず、繊維には「天然繊維」と「化学合成繊維」(合成繊維、化学繊維などの名称も)の2種類がある。
天然繊維とは、大きく動物系(ウール)、植物系(綿糸)、虫系(シルク)、さらに、それぞれが短繊維と長繊維にわかれる。ここまでなら、図を書く必要もないが、天然繊維には、歴史的に「ものまね繊維」が存在する。これをまとめると、下図のようになる。
糸は、図表のように天然繊維が高級で、その天然繊維に似せてつくり、コストを下げるために合成繊維が生まれた。例えば、最近のシャツには「TC」「T/C」という名称が付くことがある。これは、Tetron (テトロン、天然繊維に似せて合成的につくった繊維の総称)とCotton(コットン、綿)のCを足して、TCとよび、簡単に言えば綿100%のシャツが高くて買えなかった時代、主にポリエステルを混ぜてコストを落としてつくった「安ものシャツ」のことなのだ。だから、レーヨンなどは、人造絹糸の略で人絹(じんけん)と呼ばれ、「人工シルク」という意味になる。
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