プレナスが創業家によるTOBで上場廃止へ! 今後の上場オーナー企業の在り方を考察
「やよい軒」「ほっともっと」の運営元として知られるプレナス(福岡県)が上場廃止となる。株式公開買い付け(TOB)を経て創業家が全株式を取得する、いわゆるMBO(マネジメント・バイ・アウト)と呼ばれる手法により、2023年1月をめどに上場を廃止する見通しだ。
ちなみにプレナスは、創業家が会社の支配権を握る、いわゆるオーナー企業でもある。本稿では、プレナスの上場廃止からオーナー企業の特徴やメリット・デメリット、上場オーナー企業の今後の在り方について考えてみたい。
日本企業のほとんどはオーナー企業!
「同族会社」というと「オーナー企業」を想起することが多いかもしれないが、一般的にオーナー企業という概念は同族会社よりやや広いとされる。
「同族会社」とは、オーナーやその親族など上位3株主グループが株式の過半数を保有する企業のことを指す。国税庁の「会社標本調査(令和2年度分)」によると、国内にある280万ある法人のうち、非同族会社は10万社に満たない。資本金1億円以上の大法人約1万万8000社を見ても、8割近くが同族会社となっている。
一方、オーナーや親族の所有株式が過半数に満たなくても、実質的に経営権を握っている会社が「オーナー企業」とされる。上場企業の場合、純然たる同族会社は少ないが、オーナー企業と目される企業は多い。たとえば、金融機関と外国人投資家が株式の6割以上を所有するトヨタ自動車も、一般的には豊田家のオーナー企業とされている。
所有関係では、オーナー家が筆頭株主または10大株主である場合、または所有関係が弱くても役員を送り込んでいる場合はオーナー企業と定義され、上場約3800社のうち、実に半分以上がオーナー企業と言われている。
そして今回上場廃止を発表したプレナスも、オーナー企業の条件に当てはまる。オーナーの塩井辰男氏が代表取締役社長を務め、過半数には達してはいないものの、筆頭株主としてファミリーオフィスの塩井興産が4割近くの株式を握る。オーナー企業の中でも、オーナーによる支配関係は強い方と言っていい。親族間で株式所有を分散させていないため、“お家騒動”の心配もない。
プレナス上場廃止のねらいは?
会社を実質的に支配できているのであれば、わざわざ上場廃止にするのはなぜだろうか。
1つは経営権の強化だ。プレナスは2022年10月に公表したリリースで、上場廃止について「短期的な利益にとらわれずに、中長期的かつ持続的に当社グループの企業価値を向上させるためには、当社株式を可能な限り早く非公開化することが、(中略)有効な手段」との見解を示している。
オーナー社長だからといって、必ずしも枕を高くして眠れるとは限らない。少し前の話になるが、あるオーナー企業の社長解任劇は、資本主義社会における株主のパワーをまざまざとみせつけ、世のオーナー社長たちを震撼させた。
2018年6月に、シュークリームで有名な洋菓子のヒロタ(東京都)の運営元、21LADY(東京都)のオーナー社長だった広野道子氏が株主総会で解任された。当時、21LADY株式の3分の1を所有する筆頭株主だった広野氏だが、株式の17%を保有していた投資ファンド、サイアムインベストメントが経営陣の刷新を株主に提案。ほかの株主も賛同を得て、結果として広野氏は解任された。