効率改善どころかアパレル業界を死に追いやる! 「PLM」5つの致命的な誤解とは
製品の開発・設計・製造といったライフサイクル全体の情報をITで一元管理し、収益を最大化していく手法であるProduct Lifecycle Management(PLM)の失敗報道が絶えない。このままでは産業界は崩壊の一途だ。幾度も警報を鳴らしてきたにも関わらず、なぜシナリオ通りのことが起きるのか。先週は、PLM導入の裏舞台について語ったが、今週はPLM導入に関しての”大いなる勘違い”について述べる。特に大きな投資を迫られる経営者はしっかり理解してもらいたい。
![putilich/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2022/10/iStock-1322244806.jpg)
誤解と真実①PLM導入にアジャイルなどない
PLMベンダーの中には、当社は「アジャイル導入が可能だ」と吹聴しているところがあるがそれは嘘である。百歩譲って、パッケージ導入におけるアジャイル導入のことを指すのであれば、それは「システム開発」のことであり、運用まで視野にいれた「PLM」によるDX (デジタルトランスフォーメーション)のことを指してはいない。
PLMベンダーのホームページには、これ見よがしに導入スケジュールや実績が書かれているが、導入に成功した企業は、下着メーカやシューズメーカなど、自社でR&D、工場、流通、販売チャネルを持つ企業でProduct lifecycle 全体を一社のグループで制御できる企業だけである。
日本のアパレルは、売場はECであれば「ZOZO」や「楽天ファッション」など、リアル店舗であれば「イオンモール」や「百貨店」などの小売で、調達・流通は複数の商社が担う。さらに、その後ろにはテーブルメーカーや縫製工場、さらに、素材メーカーや原料メーカーが連なっている。
ある1000億円のアパレル企業は、仕入先のアカウントがなんと5000もある。こんな状況で、PLMが入るはずがない。
なぜならPLMを導入するということは、これらの膨大かつ複雑なサプライチェーン上に一つだけ置き、経済圏(エコシステム)、つまり数千人の人間が一斉に動き、一つのマスターをアップデートするという、ウルトラC級の技と取り組みが必要になるからだ。PLMベンダーの「アジャイル」には、こうした話は一切入っていない。
本来、こうしたエコシステムをつくるには、投資計画を立てる前に、誰がクラウドオーナーになる(プラットフォーマー化)のか、誰が投資をするのか、誰がオペレーションをして、サプライチェーン全体で生み出される生産性向上によるリスクシェアとプロフィットシェアをどうするのかを、マネジメント層が集まって決めなければならない。こここそが、我々デジタル戦略コンサルのノウハウなのだ。
サプライチェーンの最終段階は、CPFR (シーファー)といって、Collaborative Planning,Forecasting and Replenishmentをいう。これは、日本語で、サプライチェーン全体が共同で生産計画をたて、共同で予測を行って、共同で商品供給を行う、ことだ。つまり、細分化された(バラバラの)サプライチェーンを整理整頓し、商社を外すのか、商社と心中するサプライチェーンをつくるのかを決め、ものづくりから店頭までの最もベーシックなサプライチェーンを定義し、構築することなのである。
例えば、3D CADはアパレルが投資をするから、そこで得られるサンプル費の削減は工場の研究開発費に計上されるはずなので、その工場に対する年間発注量の目標をたて、サンプル償却費の総額から一枚あたりのコスト削減効果を算出し、CMT(製品加工賃)から削減してもらう、というオペレーションをすれば簡単にできる。定期的に商社ごとに比較を行い、もし商社が嘘をついていたら他の商社に代えれば良い。
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