なぜトライアルは「IT×小売」を志向し、リテールDXの実現をめざすのか?

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トライアル大

「リテールDX」の実現に向け、トライアルグループが重要な拠点としているのが、福岡県筑豊地方にある宮若市だ。「リモートワークタウン ムスブ宮若」(以下、ムスブ宮若)という名のプロジェクトのもと、複数の開発拠点やその実証の場としての店舗などが設置されている。一小売企業がリテールDXを軸とした街づくりを進めるという、国内では類を見ない取り組みだ。

廃校や商業施設跡を研究開発拠点に

 福岡県福岡市と北九州市のほぼ中間、筑豊地方に位置する宮若市。戦前~戦後にかけて炭鉱都市として発展、同産業が衰退した後は自動車関連を中心に製造業が主要産業となっている町だ。

 そんな同市に、トライアルグループが「リテールDX」(当時は「リテールAI」と呼称)の研究開発拠点を設置すると発表したのは20年9月。単に開発施設を置くだけではなく、宮若市と連携して“街づくり”を推進するという「ムスブ宮若」というプロジェクトを打ち立て、大きな注目を集めた。

 市内に点在する、人口減少に伴い廃校となった小中学校の校舎や閉業した商業施設などを“居抜き物件”として活用。それらの場所にトライアルグループのオフィスや店舗、研究開発拠点、宿泊施設、飲食店などを展開するというものだった。「ムスブ宮若」構想の発表後、各施設が相次いで稼働を開始。2年近くを経た今では、トライアルの関係者や取引先の社員など数多くの人が宮若を訪れ、滞在し、過疎化が進んでいた町に大きな変化が表れ始めている。

AI研究・開発拠点「ムスブAI」

トライアルの「ムスブAI」
「ムスブAI」では取引先のメーカーや卸の関係者が“入居”し、データ分析やAI活用を進めている

トライアルの「ムスブAI」の建物内

 そんな「ムスブ宮若」の主要拠点となっているのが、21年7月に稼働を開始したAI開発拠点「MUSUBU AI(ムスブAI )」だ。廃校になった旧 吉川小学校をリノベーションし、AI関連の技術者が研究・開発に打ち込める環境を整えている。

 ここに滞在するのは、トライアルグループのAI開発企業Retail AI( 東京都/永田洋幸社長)の技術者だけではない。同グループがリテールDXにおいて重視する「オープンイノベーション」の考え方のもと、この場を食品・消費財メーカーや卸メーカーにも開放。参画する企業には

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記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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