顧客起点のデータドリブン経営
DXで描く新しい顧客体験の創造

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顧客起点のデータドリブン経営 DXで描く新しい顧客体験の創造
ベイシア亀山氏

株式会社ベイシア
マーケティング統括本部本部長・
デジタル開発本部本部長
亀山 博史 氏

 

デジタル戦略の起点はアプリ提供から

ベイシアのデジタル戦略が目指すものは、“おトクで便利な買物サービスの実現“だ。リアル店舗で実現している事柄にプラスして、デジタルでも提供していくのが狙いである。そのため20年10月にアプリを立ち上げ、様々な機能を追加開発してローンチしている。アプリで会員獲得を強化するだけでなく、OMOの領域ではネットスーパー、Xマスのケーキの予約などもアプリからできるようにした。アプリの投入でデータも蓄積できており、商品DNA分析も22年から本格化する予定になっている。データ活用により、お客様に寄り添う施策を加速していくほか、棚割り作成などの戦略にも生かしていく。 アプリポイントやOMO、データ、サービスの4つを回していくことで、お客様にとってより深く生活基盤企業になることを目指していく。

ベイシアのデジタル戦略

デジタル戦略の起点をアプリとしたのは、24時間・365日お客様とエンゲージでき、効果的な販促が可能なことが理由。加えて購入単価が上がる、お客様も店員もラクになる、バナー広告収入が期待できる、データが集まることでお客様に寄り添った新しいサービス開発のヒントになるといった効果が表れている。

データを蓄積し“経験とカン”から脱却

小売業の販促では、かつては折り込みチラシが主流だった。しかし新聞購読数はこの15年間で1500万部減少したと言われており、チラシをお客様に届けられなくなっている。当社では21年に2回、チラシにクーポンを付けて配布する検証を行ったが、想像するよりはるかに低い使用率だった。もはや紙起点のプロモーションは成り立たないわけだ。

購入単価があがる | アプリ会員が一番大きなバスケット金額

アプリ会員の購入単価は従来からの板カード会員、非会員よりも高くなっている。また、Xマスといった“ハレの日”の販売では、お客様がアプリから予約することで紙の予約票を書いたり、店員がそれを確認したりする手間が省け双方のストレスが減る。

アプリを起点としたことで、データが蓄積されドミナント出店計画なども“経験とカン”に頼るよりROIの効果も高い。また産地情報など読み物コンテンツを配信も行いお客様に情報提供も行っている。過去1年の経験では、チラシでは制作時間がかかるが、デジタルなら即訴求できる、メーカーは新商品をお客様に試してもらうチャンスは少ないがデジタルクーポンを配信し無料提供することでお客様も喜ぶし廃棄ロスも出ない、土日スペシャルなどタイミングよく販促できるのもアプリの強みだ。

ID-POSデータの民主化を図る

22年1月に楽天全国スーパーサービスを開始し、ネットスーパー事業を開始した。独自にネットスーパー基盤を作るのは時間もコストもかかるしノウハウも少ない。それで楽天のサービスの利用を決めた。サイトの使い勝手では他社より高評価を得ている。

データ駆動型経営への改革では、RFM分析を顧客理解やプロモーションに活用している。さらにお客様への調査で「他者にどの程度、企業やサービスを推奨できるか」というNPSスコアを分析することで経営改善を図っている。分析結果からNPSスコアと相関係数が高いが満足度の低いエリアに関しては、徹底的に会社の総力を挙げて改善に取り組んでいる。

NPSスコアで経営改善 | NPSスコア分析

そのほかにもID-POSデータをデジタル部門だけでなく営業企画の改装担当、商品部、販売部などで利用できるようにして、“ID-POSの民主化”も図っている。そのために基盤の開放からデータ分析教育、ツール利用の研修も行った。さらに英国Tescoが始めた商品DNA分析も取り入れている。POSデータ分析から商品DNA波形やお客様プロファイルを作成し、お客様がどういう志向で何を求めているか、いわばニーズを先取りして提案する“昭和の魚屋”のスタイルを目指している。

データ分析から様々なサービスを提供するために、インタフェース基盤整備やDWH(Data Ware House:データウェアハウス)、データレイクなど柔軟で可変なシステムを構築している。DWHはAWSを利用し、データレイクはデータガバナンスが優れているという点でGoogle Cloud Platform (GCP)を採用した。今後、テストを進め本番移行する考えだ。

※このレポートは2022年4月22日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです

記事執筆者

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