ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:USMH)傘下のカスミ(茨城県)が3月26日、茨城県水戸市の茨城県庁内に無人店舗「オフィスマ茨城県庁店」をオープンした。利用客自ら商品のスキャンと精算をモバイルアプリ上で完結できる仕組みで、常駐する従業員がいない完全無人の店舗である。カスミは今年度中に同様のフォーマットを官公庁や一般企業のオフィスなど40カ所に展開する計画。将来的には既存の食品スーパー店舗のレジレス化にもつなげていきたい考えだ。
従業員が1人もいない完全無人店舗!
オフィスマ茨城県庁店は、県庁2階のロビーフロアの一角にある。売場面積は約30㎡(オープン時)で、取り扱う商品は飲料、菓子、冷凍食品、パン、土産品などおよそ500品目。県庁職員のほか記者クラブに出入りする報道関係者、一般利用者など誰でも利用することができる。
「オフィスマ」の名称は「オフィススマートショップ」を略したもの。何よりも特徴的なのは「無人店舗」である点で、当然精算レジもなく、利用客はUSMHのモバイルアプリの決済機能を使って買物する「スキャン&ゴー」の仕組みを取り入れている。
具体的な利用方法は次の通り。まずはUSMHのアプリを開き、画面上でオフィスマ茨城県庁店に「チェックイン」する。チェックインはGPS機能を利用するか、店頭に掲げられているQRコードをスキャンするかの2通りから選べるが、茨城県庁店では当面後者のみの対応となっている。その後店内に入り、欲しい商品を手に取る際に値札もしくは商品に記載されたバーコードを前述のアプリでスキャンしていく。あとは「購入ボタン」を押せば、アプリに紐付いたクレジットカードで決済される。
ここまでは、昨今日本国内でも出店され始めたいわゆる「レジレス店舗」と同様のフォーマットだ。しかし茨城県庁店で特筆すべきは「完全無人店舗」であり、常駐の従業員はいない点である。品出しは納品担当者、売場や商品の管理も1週間に1回程度の頻度でカスミの担当者が訪店して行う。
既存の食品スーパーにもスキャン&ゴーの仕組みを導入拡大へ
カスミは19年10月に茨城県つくば市にある同社本部内で、無人実験店舗「KASUMI LABO(カスミラボ)」を社員向けにオープンしている。ここでモバイルアプリを活用した無人店舗の運営を実験的に行い、利用動向を分析。それを踏まえてオープンしたのが茨城県庁店であり、店内には店名ではなく「KASUMI LABO2.0」のロゴが掲げられている。
カスミは同店を皮切りに同様の無人店舗の出店を拡大していきたい考えだ。開発に携わるビジネス変革本部 UXデザインマネジャーの髙木健一氏は「今年度中に官公庁や取引先さまのオフィス内など計40カ所に出店していきたい」と話す。店舗を一からつくるわけではなく、またオフィス内のスペースを無償で間借りして売場を設置するため、「客単価200~300円、日販3万円程度の拠点を12カ所程度つくられれば(事業として)採算ラインに乗る」(髙木氏)という。
課題となるのは利用数をどれだけ伸ばせるかという点だ。前述の髙木氏の言葉を借りれば、日販3万円を達成するためには1日100人~150件の利用数が必要。しかし本部に設置したカスミラボでの1日の利用数は20~30件にとどまっているといい、1日を通じて多くの人が行き交う県庁内という立地を加味しても、茨城県庁店でも利用促進のための何らかの策を講じる必要はありそうだ。
カスミはオフィスマの拠点拡大と並行して、食品スーパーの既存店にスキャン&ゴーという新たな決済手法を広げていくこともねらう。すでに「筑波大学店」「学園店」(いずれも茨城県つくば市)の2店舗でUSMHのモバイルアプリを介したスキャン&ゴーのサービスを導入しており、とくに夕方のピーク時間帯にはレジの混雑緩和に一定程度寄与しているという。
とはいえこの2店舗でも利用率は決して高いとは言えない状況で、カスミとしてはオフィスマを増やすことでスキャン&ゴーの利便性やメリットをより多くの人々に周知し、食品スーパーでのスキャン&ゴーの利用率を引き上げたい考えだ。
<店舗概要>
店名 オフィスマ茨城県庁店
所在地 茨城県水戸市笠原町978-6 茨城県庁2階ロビーフロア
営業時間 県庁開庁時に準ずる
売場面積 約30㎡(グランドオープン時。4月中に同フロア内で売場面積を縮小して移転予定)
取り扱い品目数 約500品目