今年度中に40カ所で出店へ! カスミが完全無人店舗「オフィスマ」の出店を急ぐ理由

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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既存の食品スーパーにもスキャン&ゴーの仕組みを導入拡大へ

店内に掲げられた「KASUMI LAB2.0」のサイネージ
店内に掲げられた「KASUMI LABO2.0」のサイネージ

 カスミは19年10月に茨城県つくば市にある同社本部内で、無人実験店舗「KASUMI LABO(カスミラボ)」を社員向けにオープンしている。ここでモバイルアプリを活用した無人店舗の運営を実験的に行い、利用動向を分析。それを踏まえてオープンしたのが茨城県庁店であり、店内には店名ではなく「KASUMI LABO2.0」のロゴが掲げられている。

 カスミは同店を皮切りに同様の無人店舗の出店を拡大していきたい考えだ。開発に携わるビジネス変革本部 UXデザインマネジャーの髙木健一氏は「今年度中に官公庁や取引先さまのオフィス内など計40カ所に出店していきたい」と話す。店舗を一からつくるわけではなく、またオフィス内のスペースを無償で間借りして売場を設置するため、「客単価200~300円、日販3万円程度の拠点を12カ所程度つくられれば(事業として)採算ラインに乗る」(髙木氏)という。

 課題となるのは利用数をどれだけ伸ばせるかという点だ。前述の髙木氏の言葉を借りれば、日販3万円を達成するためには1日100人~150件の利用数が必要。しかし本部に設置したカスミラボでの1日の利用数は20~30件にとどまっているといい、1日を通じて多くの人が行き交う県庁内という立地を加味しても、茨城県庁店でも利用促進のための何らかの策を講じる必要はありそうだ。

 カスミはオフィスマの拠点拡大と並行して、食品スーパーの既存店にスキャン&ゴーという新たな決済手法を広げていくこともねらう。すでに「筑波大学店」「学園店」(いずれも茨城県つくば市)の2店舗でUSMHのモバイルアプリを介したスキャン&ゴーのサービスを導入しており、とくに夕方のピーク時間帯にはレジの混雑緩和に一定程度寄与しているという。

 とはいえこの2店舗でも利用率は決して高いとは言えない状況で、カスミとしてはオフィスマを増やすことでスキャン&ゴーの利便性やメリットをより多くの人々に周知し、食品スーパーでのスキャン&ゴーの利用率を引き上げたい考えだ。

オフィスマ外観

<店舗概要>

店名 オフィスマ茨城県庁店

所在地 茨城県水戸市笠原町978-6 茨城県庁2階ロビーフロア

営業時間 県庁開庁時に準ずる

売場面積 約30㎡(グランドオープン時。4月中に同フロア内で売場面積を縮小して移転予定)

取り扱い品目数 約500品目

 

 

 

 

 

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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