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イオン九州が密かに実験する小型新業態「ニコキッチン」の全容

イオン九州(福岡県)がひっそりと小型店の実験を進めている。5月末、「ニコキッチン」という屋号で路面店をオープン。直営の売場に加え、総菜専門店とベーカリーをテナントに迎えるという構成だ。大型店を展開してきたイオン九州が、人知れずチャレンジする小型店の中身とは。※文中の価格はすべて税抜き、5月27日時点のもの

総菜・ベーカリーはテナントが出店

イオン九州が5月末にオープンした「ニコキッチン六本松店」

 福岡市の中心部「天神」から福岡市営地下鉄七隈線でおよそ10分。「六本松」駅を降りてすぐ、新築オフィスビルの1階部分に5月24日、「ニコキッチン六本松店」という小型店がオープンした。

 同店を運営するのはイオン九州。同社はすでに「イオン二日市店」でニコキッチンの運営実験を行っているが、六本松店は初の単独出店かつ路面店という位置付けである。六本松店の開店に際してニュースリリースの類は一切出されず、店舗情報のページも用意されていない。人知れずオープンした理由について、イオン九州の広報担当者は「まだ実験の域を出ていないため」と説明する。

 六本松店の売場面積は150~200㎡前後と推測され、少し大きめのコンビニと同程度のサイズ感だ。イオン九州の直営売場のほかに、総菜専門チェーンのクック・チャム(愛媛県)と阪急ベーカリー(大阪府)がテナントとして出店している。店頭に「ニコキッチンは食卓をサポートするあなたの第2のキッチンです。」とのメッセージが掲げられているとおり、全体的に即食性の高い商品構成となっている。

 店内に入ってすぐの場所にあるのが、クック・チャムの売場だ。中央部の平台では量り売りの総菜が置かれ、「さばの味噌煮」(257円/1切)、「贅沢酢豚」(107円/50g)、「お母さんのおいしい唐揚げ」(107円/50g)、「おばあちゃんのコロッケ」(86円/1個)、福岡の郷土料理「がめ煮」(50g/107円)など、和洋中の家庭料理が並ぶ。このほか冷ケースではサラダやデザートなども販売している。

 売場を奥に進むと、イオンの直営売場が配置されている。飲料・酒類、菓子、加工食品、冷凍食品、チルド総菜、日用品を中心とした商品構成で、生鮮食品は置かれていない。

 総菜売場に併設するのが、阪急ベーカリー運営のインストアベーカリー。価格は100円・150円が中心で、「塩バターパン」「アスパラ&ベーコンフランス」「ピロシキ」(各100円)、「リンゴパン」「バトンショコラ」(各150円)など、定番メニューからユニークなものまでバラエティ豊かな品揃えとなっている。 

 六本松店ではこのほか、店舗入口付近、インストアベーカリー内、店外のオープンスペースの3カ所にイートインスペースが設置されている(それぞれ10席程度)。総菜やパンをその場で食べられるようになっており、筆者訪店時(平日の15時頃)は、近隣住民と思しき主婦のグループがコーヒーを飲みながら会話に花を咲かせていた。このように、限られた売場スペースのなかで、カフェ的な要素も付加されているのだ。

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小型店モデルの実験拠点に

店頭には「イオン」の文字やロゴは一切掲げられていない

 一方、六本松店で何よりも気になるのは、イオン九州の運営にもかかわらず、イオン的な要素がほとんど感じられない点だ。ファサードを見ても店内を見ても、イオンのロゴ等は掲げられておらず、一見したところ、イオングループが運営する店とはわからない。イオンの”色”を意図的に排しているようにすら感じられるのだ。

 イオン九州の意図は今のところ不明だが、おそらく戦略的な実験店であるがゆえに、イオンのブランドを前面に出す必要がない(出したくない)という事情もあるのかもしれない。また、既存のイオンの店舗と明確に差別化を図りたいといったねらいも推測される。

 いずれにしても、大型店を主力フォーマットとしてきたイオン九州が、都心部立地の小型店の実験を進めるということは、同社が経営戦略上の大きな転換点を迎えていることは確かだ。六本松店を実験拠点としながら、イオン九州はどのような小型店モデルを構築していくのか。動向が注目される。

店名 ニコキッチン六本松店
住所 福岡県福岡市中央区六本松2-3-6 六本松SKビル1階
営業時間 8:00~22:00
アクセス 福岡市営地下鉄七隈線「六本松」駅から徒歩3分