クラシエホールディングス(東京都/岩倉昌弘社長)傘下のクラシエフーズ(東京都/橋本 光央社長)は、2022年12月から、ツルハホールディングス(北海道/鶴羽順社長)グループの店舗において、知育菓子「ねるねるねるね」シリーズから、服薬補助食品の「おくすりパクッとねるねる」を展開し、SNSで話題を呼んでいる。知育菓子を服薬補助食品に発展させた開発の背景に迫る。
画期的なアイデアがSNSで話題に
「ねるねるねるね」は1986年にクラシエフーズから発売された知育菓子だ。2種の粉と水を混ぜ合わせることで、色が変わりふわっとふくらむ。化学実験や魔法を想起させる手順が、長年子供たちから支持されている。
2022年12月に、その「ねるねるねるね」シリーズから、服薬補助として使用できる「おくすりパクッとねるねる」が発売された。粉に水を混ぜ合わせて「ねるねるねるね」をつくり、そこに粉薬を混ぜ込むと苦みが軽減される。
メロンソーダ味とイチゴ味の2種類が各3袋とトレー、スプーンが入り、店頭参考価格は486円だ。ツルハグループと一部病院の売店のみでのテスト販売だったが、またたくまにSNSで話題となり、売上は好調だ。
「おくすりパクッとねるねる」の強みは2点。まず、粉であるがゆえに賞味期限が長いことだ。「一回使い切りの小分けタイプで賞味期限が2年と長く、家に常備しておける」(クラシエフーズマーケティング室菓子グループの木下優氏)。
次に、「苦い薬を飲むことを嫌がるお子さんに苦労する方も多いが、当商品は、『ねるねるねるね』のように色は変わらないものの、お子さん自身が専用のトレーとスプーンを使って遊び感覚で粉を練って薬を飲めるほか、苦みも感じづらいのでお子さんが進んで薬を飲んでくれる」(木下氏)と、子どもが服薬の際に嫌がらないという点も強みだ。
ターゲットの幅は想定よりも広かったという。同社広報Twitter担当の長江舞氏は「当初は子供向けに開発したものだが、Twitterなどの反響を見ると、過去に『ねるねるねるね』を楽しんだことのある大人からも支持を得ている」と説明する。
開発を手掛けたのは新入社員
「おくすりパクッとねるねる」の開発のきっかけは、クラシエ薬品の営業担当者が、ある病院の小児病棟で「ねるねるねるね」が服薬補助として使用されていると知り、それを開発部に伝えたことだという。「『ねるねるねるね』のふわふわと膨らむ性質が、薬の苦みや独特の風味を軽減することを薬剤師さんが発見したようだ」(木下氏)。
その情報を基に、服薬補助商品の開発をリードしたのは当時まだ入社1年目の、食品研究所粉末食品グループ(当時品質保証・基礎研究チーム)に属する瀧川雄太氏だ。当初は入社時の研修テーマとしてこの「おくすりパクッとねるねる」の商品開発を任された。「新しいテーマであり、課題も多かったことから、周囲からは実現は難しいと思われていると感じていた」と木下氏は話す。しかし、先述の病院に足しげく通い、さらに知育菓子チームと協力し、「薬の効能を損なわず、なおかつ苦みや嫌な風味がなくなる」ねるねるねるねを3年の月日をかけて実現した。
従来、クラシエフーズではチームの枠を越えた連携はあまり多くはなかったが、今回の服薬補助食品の開発のスタイルが、商品開発の好例になったという。「まだ仕事を型にはめて考えていない新入社員が手掛けたからこその結果だと考えている」(事業企画室の有賀文威氏)と話し、今後は組織やチームの垣根を越えて、柔軟に商品開発をしていくとした。
また、「少子高齢化社会において、知育菓子部門が生き残っていくために、さまざまな展開を考えなければいけない。そうしたなかで、チームや組織の垣根を越えての商品開発の流れができたことは大きな躍進だ」(有賀氏)と話す。
チームや組織の垣根を越えた商品開発をめざす
今後は、テスト販売によって得られたアンケートなどの結果をもとに「おくすりパクッとねるねる」の改善を図っていくという。そのほか、クラシエフーズのTwitterアカウントでの顧客とのやりとりから、アンケートでは拾いきれないような細かな要望も拾い、反映し、本格的な販売へとつなげていく考えだ。
また、有賀氏はこうも語る。「10月1日にはクラシエフーズ、クラシエホームプロダクツ、クラシエ製薬が一体化し、クラシエとなる。今後は一層組織間のつながりを深めた商品開発やマーケティングをめざしていきたい」。
知育菓子である「ねるねるねるね」を服薬補助食品として活用したクラシエの今後の商品開発に期待が高まる。