その売り方は本当にお客様に届いているか? 買いたくなる習慣の広げ方・下
自社の商品・サービスのリピーターになってもらうために、最初からマスを狙うのは得策ではない。まずは少数の顧客をつかみ、彼らの習慣としてもらう「1→10」をイメージして広めていくことが近道だ。博報堂ヒットメーカーズ「カイタイ新書」からその「局所的な」攻め方を解説してきたが、下では売場の見直しや商品開発のポイントをまとめる。
売場自体を変えてみる
次の手法は「売り場を変えてみる」です。ある商品を習慣的に利用してほしいときに、生活者がその商品の習慣的な利用シーンや手法まで完璧に理解して購入しにきてくれたら、こんなにありがたいことはありません。しかし多くの生活者は、今日の夕ご飯は何にしようかなとか、シャンプーがなかった気がするとか、何を飲みたい気分だろうとか考えながら、それこそ曖昧な情報をもって売り場に訪れます。そのような生活者に向けて、企業側はなんとか売り場で情報を伝えようと、商品のパッケージデザインを工夫したり店頭POPを制作したりと、さまざまなことを試みるのですが、もっとチャレンジングに売り場自体を変えてみるのも1つのやり方です。
例えば、カップスープをもっと朝食と一緒に食べてもらいたいとします。一般的な店舗であれば、味噌汁や春雨スープ、カップラーメンやカップ焼きそばなど類似の商品群と同じ棚で売られています。それでは、生活者はカップラーメンを食べたいときに「今日はおなかが空いてないからカップスープにしようか」という具合に、カップラーメンと同じ飲食機会の商品としか認識してもらえないでしょう。それが例えば、パンの売り場で売ることができたらどうでしょう。朝食のパンを買いに来た人が一緒にカップスープを買ってくれて、朝食に食べる習慣のきっかけになる可能性が高まります。
このような売り場の変更はコンビニエンスストアやスーパーなどの流 通との交渉が必要なのでハードルが高いのですが、まずは考えて挑戦し てみることが大切です。もっとチャレンジングに売り場を変えることもできます。例えば、オ フィスにお菓子の箱を置いたり、販売員が売りに来るメーカーもあります。
これと同様にカップスープをオフィスで飲んでもらう習慣を広げたいとき、コンビニに卸すのではなく直接オフィスで売ってしまうという 方法も考えられます。他にも、少し視点を変えて、老眼用のルーペをか ける習慣をもっと広げたいとき、メガネ屋ではなく本屋で売ってしまう方法だって考えられるでしょう。このように売り場を変えることで、直感的に生活者にこちらの意図を理解してもらうことができるだけでなく、いつもと違う場所で売られている意外性によって習慣を周囲に広めたくなるきっかけにすることもできるのです。