すべての人が「着たい服」を選べる世界めざす!「キヤスク with ZOZO」とは

上林 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集者)
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ユニバーサルデザインの衣類とインクルーシブウェア、何が違うか?

 近年、すべての人が着やすいよう考慮された「ユニバーサルデザイン」の衣服や、男女兼用(ユニセックス)の商品が増えている。これらが社会全体に浸透してきているのに対して、特定の人々に向けたインクルーシブデザインの衣服はまだそれほど広がっていない。そのような状況下でZOZOがインクルーシブウェアの普及に取り組む意義、ZOZOだからこそ可能になることはどのようなことなのか。

 インクルーシブウェアをつくるにあたって、ブランド側が特定の人の抱える問題を見つけ、その人々に向けた商品づくりをしていく。つまり、想定する購買層は特定の悩みを抱える人々であり、広くない。前述したユニバーサルデザインの服などと比較すると、大量生産して在庫を抱えることはブランドにとってリスクにつながるのだ。

ZOZOが取り組む意義、ECサイト活用の利点

 ZOZOはこの問題を、自社のサービスによって解決している。それがファッションブランドの在庫リスクゼロをめざすZOZOの生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」だ。同プラットフォームは、商品の企画・設計から調達、生産、物流、販売までサプライチェーンを一気通貫でサポートするというもの。ZOZOTOWN上でお客からの注文を受けた後に生産を行い、受注から最短10日で発送する。このシステムの活用によって、ブランドはニーズに対応した複数のサイズやデザインを用意しておけば、在庫を抱えることなく販売を行える。ここにZOZOが取り組む意義がある。キヤスクの知見を生かしたウェア開発に加え、豊富な色展開も可能になっており、障がいを抱える当事者が自分好みの服を選べるメリットがある。

 ZOZOTOWNには24年3月末時点で1566店のショップが展開されている。「キヤスク with ZOZO」の取り組みに共感したブランドがデザインを開発することによって、サイト内で多くのインクルーシブウェアが販売されるようになる。同一サイト内に選択肢が増えることによって、お客側も気軽に服を探せるのだ。これこそ、ECサイトが中心になって取り組む大きなメリットではないだろうか。
 障がいの有無にかかわらず、すべての人がファッションを楽しめる環境が実現できるか、今後の取り組みに期待だ。

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記事執筆者

上林 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集者

2000年生まれ。埼玉県出身。法政大学文学部英文学科卒業後、地方新聞社の営業職を経て株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。

流通小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部で執筆・編集を行う。

趣味はお笑い鑑賞、音楽鑑賞。一番好きなアーティストは椎名林檎。

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