本業もリテールメディアも好調 死角なしウォルマートの最新戦略

鈴木 敏仁 (R2Link代表)
Pocket

世界最大の小売企業であるウォルマート(Walmart)が、依然として力強い成長を続けている。リアル店舗という資産を最大限に生かしながら取り組むEC事業が業績を牽引すると同時に、リテールメディアや生成AIの活用など新たな領域でも存在感を高めている。小売の巨人の行く末とは──。

23年度も不変の強さを示す

 ウォルマートの2023年度の連結売上高は6481億2500万ドル(対前年度比6.1%増)、連結営業利益高270億1200万ドル(同32.2%増)、連結最終利益高155億1100万ドル(同32.8%増)だった。

ウォルマート
ウォルマートは2023年度の決算でも力強い成長を示した

 昨年は金利引き上げやインフレで買い回り品需要が落ち込んだこともあり、収益を悪化させる企業が少なくなかったので、ウォルマートの強さが際立ったと思っている。利益率の大幅増は22年度に落ち込んだものが昨年元に戻ったからである。

 落ち込んだ最大の理由は在庫過多による値下げだった。昨年度の総在庫高はマイナス、棚卸資産回転日数は8.2から4.9へと大きく改善しており、パンデミックで膨れ上がった在庫の調整が終わったことが数値で見て取れる。

 既存店成長率(ガソリン売上高除く)は米国ウォルマートが5.6%増、メンバーシップホールセールクラブのサムズクラブが4.9%増、連結で5.5%増だった。米国ウォルマートの伸び率には、ストアピックアップとデリバリーによるEC売上の2.6%増が寄与していると決算書には記されている。

 既存店の好調の理由として挙げられているのは

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

記事執筆者

鈴木 敏仁 / R2Link 代表

在米30年以上、現在はロサンゼルス在住。1997年にアメリカでS.M.R., Inc設立、米国流通業界を軸としたコンテンツ作成ビジネスを開始。また企業が実施する米国流通研修の企画およびコーディネートも合わせてスタート。1998年にリテールウェブを開設。年間訪問店数はのべ600店舗超、現場検証に基づいた分析をモットーとする。

著書

『ソリューションを売れ!』(ニューフォーマット研究所)
『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』(商業界)

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態