”無双”状態のウォルマート、壁にぶち当たるアマゾン… コロナショック下で明暗分かれる米小売業
配送能力の不足が露呈したアマゾン
一方、生鮮宅配を拡大しているECの王者アマゾンにとっても、コロナによる“巣ごもり消費”は有利に働いている。事実、アマゾンには注文が殺到、株価も年初から10%以上上昇している。
しかし皮肉にも、予期せぬレベルの需要の急増はロジスティック面における同社の弱点をさらけ出すこととなった。まず、爆発的に増加する生鮮や生活必需品の需要増のため、プライム会員に対する“約束”である数時間内の生鮮宅配やその他の商品の翌日配達が困難になっている。また、生活必需品の配送を優先したため、“不要不急”と見なされたカテゴリーの商
品やサードパーティーが出品した商品の配送が最大で1カ月も後回しにされ、顧客からの不満が相次いでいるのだ。
加えて、商品購入時に「あわせて買いたい」として表示していたおすすめ商品の提案を中止、値引きクーポンの配布数も絞りこんだ。5月の母の日や6月の父の日に向けたプロモーションも取りやめ、毎年7月に開催するアマゾン最大のセールイベント「プライムデー」は順延としている。とにかく配送量を減らすため、大きな商機をも見過ごさざるを得ない状況だ。合わせて、グーグル検索への広告出稿も削減、他社向け集荷配達サービスも休止するなどビジネスの規模を大きく縮小させている。
このことからアマゾンでは、想定の範囲を超えた事態であったとはいえ、コロナ危機が起こる前から配送センターや配送網のキャパシティにさほど余裕がなかったことがうかがえる。同社は17万5000人を新たに雇用し、傘下のSMホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)の実店舗からの配送を増やすなどの手を矢継ぎ早に打っているが、以前の体制にまで立て直すには至っていない。