アングル:パン屋もバーも火鍋屋も、中国の中小零細が存亡の危機
[北京/上海 6日 ロイター] – 中国では新型コロナウイルスの感染流行で、多くの零細事業が存亡の機に瀕している。
精華大学と北京大学が先月、零細と中小の約1000業者を対象に実施した調査によると、現在の資金繰りであと1カ月存続できると答えた割合は34%にとどまった。
中国政府は企業に事業再開を求めているが、小規模な商店や消費者向けサービス事業のオーナーは非常に悲観的だ。人々は収入と雇用が脅かされているためカネを使う気になれず、人が集まる場所に足を踏み入れることも引き続き警戒しそうだからだ。
事業主の話をいくつか紹介する。
「立ち行かなくなる」=ベーカリー
フレンチベーカリーのチェーン店「コントワール・ドゥ・フランス」の創業者でパリからやって来たバンジャマン・デボさん(41)にとって、春節休暇は例年売り上げが鈍る時期だが、休暇の終わりにかけて持ち直すのが普通だ。それが「今年はさっぱりだ」
営業を続けている同社のカフェ15店舗中10店舗で、来客数が急減しただけではない。航空会社やホテルなどの企業顧客からも、クロワッサンやデザートの注文がキャンセルされた。
2月第3週までに売上高は前年比84%も落ち込み、スタッフの給与や店の家賃の支払いに苦労している。「ちょっと気落ちし過ぎて、過去1週間の数字は計算していない」
デボさんを助けようと、顧客らがクラウドファンディングで30万ユーロ(約3550万円)を募ろうとしてくれたが、これまでに集まったのは1万4400ユーロだ。
「正直言って、数週間中に立ち行かなくなりそうだ」とデボスさんは語った。
「台湾に戻って人生の新しい章を」=バーのオーナー
台湾生まれのサム・クワンさん(37)は3日、上海のカクテルバーをたたんだ。
バー「バルールズ」は6年前に開業。だし汁やグリーンプラムなどを使ったドリンクですぐに上海きっての気の利いたバーとして評判になった。
しかし米中貿易戦争によって米国製バーボンに輸入関税がかけられ、ここ2年は苦戦。とどめの一撃が新型コロナウイルスの感染拡大だった。
閉店は苦渋の選択だったが、「将来は台湾に帰って人生の新たな章を書き始めるつもり」だ。
「こういう時期にリスクや責任を負わされるのは、常に中小のビジネスだ。(たとえ営業を続けていたとしても)客が安心して出掛けられるようになり、経済が安定するには少なくとも半年かかっただろう」
「最悪のタイミング」=火鍋レストラン
リー・ボヤンさん(28)は1月、北京に魚専門の火鍋レストランを開業するため、繁華街物件の賃貸と改装に400万元(約6000万円)を投じた。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大で開業は遅れ、店が客であふれるという夢も遠のいた。
「経験では春節後はビジネスがとても好調なはずなのだが、今年はタイミングが最悪だった」
今レストランにいるのはウエイター数人だけ。ピカピカの床とテーブルを何度も消毒して暇をつぶしているという。
最も深刻なのは資金繰りだ。「良い日でも客は1人か2人。1日の売り上げが1000元(約1万5000円)を超えることはない」
「客は1日2、3人」=高級スパ
北京の高級モールに店舗を構える「パール・デラックス」は、スキンケアやスパを提供している。4年前に開店して以来、ここまで来客数が落ち込んだのは初めてだ。
マーケティングマネジャーのリリー・ファンさん(42)は「通常は毎日少なくとも20人の来客があるが、今はせいぜい2、3人」と言う。オンラインのレビューアプリによると、この店の顧客が1回に使う金額は平均2500元近い。
店は現在、大家が賃料を免除してくれるかどうかを待っている。他に打てる手はほとんどないとファンさんは言う。
「11人の従業員と顧客のために、なんとか頑張り通すつもりです」