国内ユニクロ事業が売上収益1兆円を突破 ファーストリテイリング本決算を徹底分析
欧米を含め全方位の成長政略を加速
ファーストリテイリングは今後、市場シェア約12%を占める日本、中国本土、韓国を事業の柱と位置付ける。また、約0.5%の欧州や北米、約2%の東南アジア・インド・豪州地区は成長市場として積極的に投資することで、全方位の成長を加速させる計画だ。
世界の主要都市にはすでに40店以上の旗艦店を展開しているが、スクラッブ&ビルドや改装を積極的に実施する。国内では今期、西日本最大の店を大阪・梅田で10月24日に開業する予定。また、香港では大型商業施設の「ミラプレイス」に、ドイツではフランクフルト、ポーランドではワルシャワ、米国ではシカゴやサンフランシスコなどに”旗艦店級”の出店を計画している。
初めて1兆円を超えた国内ユニクロ事業は、1店1店が地域のお客のニーズに応える「個店経営」を実践し、次の成長をめざす。グループ全体をリードする最重要事業として、売上の安定成長と15%以上の高い営業利益率を確保する方針だ。柳井氏は「英国のマークス&スペンサーはかつて20%以上の国内シェアがあった。『ユニクロ』事業の成功例をほかの価格帯でも横展開していけば、われわれも国内シェア20%は不可能ではない」と話した。
「ユニクロ」店舗の約4割に当たる1008店(8月末時点)を展開しながらも近年停滞している中華圏は立て直しのため、①価値を創出する商売、②個店経営の推進、③店舗の質の向上、④経営人材の強化の4つを柱に事業構造改革を進める。
4期連続で2ケタ成長している東南アジア・インド・豪州地区では、まだ大きな成長余地があるとみて、さらなる成長をめざす。9月から東南アジアを統括するCEO職を配置。また、各地域に合った商品構成やマーケティング、店舗とEC運営などの変革に取り組む。フィリピンとタイは早期に売上収益1000億円の達成をめざす。
欧州と米国では、近い将来にそれぞれ売上収益1兆円をめざす。今期は欧州ではミュンヘン、フランクフルト、バーミンガム、グラスゴー、ブリストルなど各国の主要都市に進出する。米国ではシカゴ、サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンなどで旗艦店を出店する。商品面では、米国CEOがグローバルの商品開発責任者に就任し、欧米発の商品開発を強化していく姿勢だ。
グローバルな成長を進め、アパレル世界一へ着実に歩を進める
決算説明会で柳井会長兼社長は「『服の民主主義』を世界で実現し、従来のアパレルの概念を超えたケタ違いの成長を実現したい」と展望語った。さらに質疑応答では「グローバルで(ユニクロの)ブームが来ているのではないか」との手応えを示している。
例として、1998年に初めて都心部に進出し、その後の「ユニクロ」の飛躍のきっかけとなった東京・原宿店でのフリースの空前のヒットを引き合いに出し、「あのブームのおかげで日本における全国ブランドになった。全世界でこれだけ売れるのは今までなかった現象だ。あの時と同じことが起きているのではないか」とも話した。この勢いを好機として、長期目標に掲げる売上収益10兆円に向け、さらにグローバルで成長しようという意欲を見せている。
アパレル企業の世界売上高ランキングでは、首位のインディテックス(スペイン)、2位のH&M(スウェーデン)に続き、ファーストリテイリングが3位につけている。H&Mとの差は現時点で2000億円程度まで縮まった。同社の直近の業績は伸び悩んでおり、このままいけば近くファーストリテイリングが2位に躍り出る公算が大きく、めざす世界一に王手をかけることになる。
なお、ファーストリテイリングは取締役の定員を現行の10人以内から15人以内に増員し、11月27日付でユニクロ社長兼COO(最高執行責任者)を務める塚越大介グループ上席執行役員が取締役に昇格する予定だと発表した。柳井氏とその子息2人を除けば、同社の社内取締役は現時点で岡﨑健CFO(最高財務責任者)しかいない。
塚越氏は国内ユニクロ事業躍進の立役者とされている。柳井氏は「世界に出るとライバルが増えていく。取締役も若い人を含め、もっと優秀な人の中から選んで、人材の質を上げないといけない。塚越君はその有資格者の一人だ。私がいなくなったら、岡崎君や塚越君たちが支え、リーダーシップを発揮してもらわないと」と次の時代も見据えている。





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