ユニクロとしまむら、フェーシング数量に見るロジスティクスと商売哲学の違い

2025/05/12 05:55
小島健輔 (小島ファッションマーケッティング代表)
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コンビニや食品スーパーの棚に並ぶSKUごとのフェーシング数量は、欠品せず滞貨もしないよう適切に設定されているはずだが、現実には需要と乖離して過大過小なケースも多々見られる。アパレルでも「しまむら」は各1、「ユニクロ」は各1ダースをベースとするなど大差があるが、その背景には「縦売り」と「横売り」※1というMD政策に加えてロジスティクス体制の違いもあるようだ。 

※1 縦売りと横売り⋯⋯同一品を備蓄補給して大量継続販売するのが「縦売り」、バラエテイを揃えて少量を蒔き切りで売り切っていくのが「横売り」

『原則各1で中心サイズのみ各2』のフェーシングを志向するとされる「しまむら」だが、都心店ではフェーシング数量を盛っている(写真は都内店舗にて筆者撮影)

「神話」と現実は異なる

 「ファッションセンターしまむら」(以下、「しまむら」として企業総体のしまむらと区別)のアパレル商品のフェーシング数量は『原則各1で中心サイズのみ各2』と業界ではまことしやかに囁かれている。だが、毎月のように「しまむら」の都内近郊店舗を見て回っていると必ずしもそうではないことがわかる。商圏人口が限られるローカルやエクサバン(農地や工場・物流施設も混じるサバブ外辺圏)の店舗では確かに「神話」通りだが、「都心店舗」(と言っても東京圏で言えば環七の外側の私鉄駅近接地)ではアパレルの中心サイズで4〜5、肌着やナイティでは6以上、パッケージ肌着では1ダースというケースも見られ、『立地の販売速度と補給頻度で決まる』という定石通りと見るべきだろう。

「しまむら」のパッケージ肌着売場。フェーシング数量は1ダースとなっている(筆者撮影)

 「しまむら」の店舗の大半はローカルやエクサバンの生活道路沿いに立地し、商圏人口は2〜3万人ほどだが、少子高齢化と若年女性の大都市圏への流出で先行きが厳しいのが現実で、人口密度の高い大都市圏のサバブ(戸建て住宅地)やアーバン(集合住宅化する再開発期の住宅地)の私鉄駅近接立地への出店を進めている。そんな「都心店舗」では、ローカル店舗の4〜5倍の客数が期待できるから、同じ補給頻度なら(全国10リージョナルのTCから毎日、ルート便が巡回するから当然に同じ)SKUフェーシング数量も4〜5倍が適切ということになる。

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記事執筆者

小島健輔 / 小島ファッションマーケッティング 代表

小島ファッションマーケティング代表取締役。洋装店に生まれ、幼少期からアパレルの世界に馴染み、業界の栄枯盛衰を見てきた流通ストラテジスト。マーケティングやマーチャンダイジング、店舗運営やロジスティクスからOMOまで精通したアーキテクト。

著書は『見えるマーチャンダイジング』から近著の『アパレルの終焉と再生』まで十余冊。

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