ランサムウェア被害で延期のイズミ本決算がついに発表、西友九州事業取得のねらいは?
イズミ(広島市/山西泰明社長)は6月27日、2024年2月期(23年度)の決算会見を実施した。24年2月にランサムウェア攻撃を受けた影響で、例年より2カ月ほど遅れた時期での決算発表となったイズミの本決算。23年度の業績は、既存店活性化が奏功したことに加え、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う人流増加が追い風となり増収を果たしたものの、積極的投資の実施やランサムウェア被害が響き、減益での着地となった。また、4月には西友(東京都)の九州事業を取得することでも注目を集めた同社。決算発表会では何が語られたのか。
ランサムウェア被害から「創造的復興」へ
イズミの2024年2月期(2023年度)の連結決算は、営業収益が4711億円(対前期比2.4%増)、営業利益は314億円(同6.6%減)、経常利益が323億円(同6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が204億円(同11.7%減)だった。
既存店の活性化投資が奏功したことに加え、新型コロナウイルス感染症の「5類」移行による人流増加も追い風となり、営業収益は増収となった。一方で、新店および既存店活性化への積極投資、販管費の上昇、そして2024年2月15日に発生したランサムウェア被害によって生じた販売機会逸失などが影響し、営業利益以下の段階利益はいずれも減益で着地している。
イズミの山西泰明社長は23年度を振り返り、「上期はある程度インフレを予測して商品提供ができた一方で、下期はインフレ加速が想定をかなり超えてきた」と分析。インフレの進行により消費者の購買力が許容範囲を超え、値ごろ感の訴求が主戦場となる中、「お客さまの価値観に対する見直しが十分にできなかった」ことを反省点として挙げた。
今回の決算発表の遅れの原因ともなった同社に対するランサムウェア被害では、店舗発注システムが停止したため店頭サービスや品揃えに混乱が生じ、顧客管理システムの利用や販促活動にも支障が出た。これによる機会損失で生じた利益へのマイナスは約3億円。また、システム障害対応費用として約10億円の特別損失を計上している(減損損失などを含む特損合計は42億円)。
山西社長によると、「最悪の影響が表れたのは4月。既存店売上が約1割減少した」としているが、「5月は約97%、6月の既存店売上高はトータル104~105%まで回復している」とのことで、今後は再発防止策を講じるとともに、低価格への対応強化によって客数減少からの回復を図り、「創造的復興」を遂げたい考えだ。
イズミは西日本地域で広島、熊本、福岡、山口を重点エリアと位置づけ、出店、活性化、M&Aによりドミナント戦略を加速させている。店舗新設と既存店活性化に積極的に投資した23年度は「ゆめタウン飯塚」(福岡県飯塚市)、「ゆめテラス祇園」(広島市)、「ユアーズ東本浦店」(広島市)の3店を出店。老朽化した店舗の若返りや付加価値提供による競争力強化を図るべく、イズミおよびグループの食品スーパー(SM)企業の店舗全12店の大型活性化を実施した。24年度も3店の新店出店、19店の大型活性化を計画している。