オーガニック生産者の結集なるか? イオンが描く市場拡大の仕組みとは
製配販の課題解決に独自インフラを活用
製配販の課題に挑むイオンの戦略を、川下から遡ってみましょう。まずは販路です。これは小売主導ならではの強みで、グループの店頭を確保できます。オーガニックコーナーは拡大中ですし、長期視点で強化ポイントと位置付けられています。農家は売場を確保したうえで生産計画を立てられます。
次に物流です。全国に点在するオーガニック野菜の生産者には、宅配便で出荷するところも多いといいます。福永社長は「宅配便で送るコストは価格に反映せざるを得ない。それにより、買いづらい売価になり、商品が回転しづらくなる。ただ、非効率な部分を改めれば、価格は下げられる」と主張します。
そこでアライアンスでは、グループ直営農場か、すでに取引のある契約農場を拠点とする仕組みを提案します。生産者の近くにある拠点農場に集約し、そこからグループの物流インフラに乗せて合理化しようとするものです。アライアンスの各農場から1時間以内の持ち込みを想定し、納品までのリードタイム短縮によって鮮度アップも図ります。
最後に生産です。アライアンスへの参加希望者の間口は広く、まずはウェブの専用サイトに登録するだけです。それから取引関係の構築へと段階的につながりを深めていく仕組みになっています。最初から取引を始められるのに越したことはないのでしょうが、オーガニックの生産にこれから着手する、場合によっては新規就農者にも対応できるよう運営していく方針です。「参加の条件は、有機JAS認定の取得を目指すことだけ」(福永社長)といいます。
専用サイトではイオングループの取り組みや海外の事例など、オーガニック市場の情報を得ることから参加できます。それから勉強会や交流会、ノウハウの共有、将来的には資材の共同購入まで、取引以外のつながりも発展していくそうです。
大と小の相乗効果で、なるか拡大スパイラル
このような仕組みで、アライアンスではオーガニック生産者を増やし、物流を合理化し、購入の場を広げようとしています。そうしてオーガニック商品の価格を下げ、鮮度を高め、種類は豊富に、どこでも買える環境の実現を目指します。
巨大流通グループならではの物流・販路を活かした解決策も魅力的ですが、小規模でも生産者の数を増やしたいというアプローチが興味深いと思います。
国内の新たな就農者には、オーガニックの生産を志す人が少なくないといいます。ただ、通常より難しく手間もかかるオーガニック栽培を中途で断念する割合も高いといいます。かといって、法人が大規模に参入すれば成功するかというと、事業のリスクも高まりますし、生産性が向上するとは限らないのが農業の世界といわれています。
小規模な生産者も取り込めて、各地域に分散可能な仕組み、それは日本の農業の実態に即したアプローチのように思えます。福永社長は「小規模でも、集まれば量は作れる」といいます。一定の規模がある直営農場を核に、小規模農家も組み込んで生産量を高めようというこの仕組みで、オーガニック市場に拡大のスパイラルを生み出せるでしょうか? イオンの販売戦略というだけでなく、日本の農業のこれからという点でも注目すべき挑戦です。