データで見る流通
東京都23区のCVS店舗間の平均距離は149m
文=竹本 遼太
三井住友トラスト基礎研究所 投資調査第2部 副主任研究員
日本全体では2008年12月をピークにして人口減少トレンドにある一方、地方や郊外部からの人口流入によって、東京都区部の人口は増加を続けている(図表1)。
今から20年後の2035年には、全人口の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となる超高齢社会の到来が予想されており、小商圏のサービス提供拠点として高齢者が自宅から徒歩で容易にアクセスできるコンビニエンスストア(CVS)の需要がより高まると考えられる。
筆者は、今後迎える超高齢社会の経済・社会インフラとしてCVSが果たすと考えられる役割の重要性を踏まえ、CVSチェーン12グループの5万4468店舗(15年7月時点)と、人口の地理的分布の関係を分析し、CVS店舗網がカバーする徒歩圏人口を推計した。本稿では、人口増加を続ける東京都23区についてみていきたい。
図表2に示したように、東京都23区においてはCVS店舗から300m圏で人口の87%がカバーされ、同400m圏で96%、同500m圏では99%と、東京都23区のほぼ全人口が最寄りのCVSまで徒歩圏内に居住している。東京都23区におけるCVS店舗間の平均距離は149mであった。なお、東京都のような大都市ほどCVS徒歩圏に居住する人口割合は高く、関東(東京・神奈川・埼玉・千葉・群馬・茨城・栃木の1都6県)における500m圏人口カバー率は81%、日本全国では68%と、郊外部や地方においては相対的にCVS徒歩圏に居住する人口割合が低い。
高齢者に限った分析でも同様の傾向がみられ、東京23区では高齢者の86%が最寄りのCVSから300m以内に居住している。高齢者人口カバー率が最も高いのは100%の千代田区で、世田谷区と練馬区は80%を割る。世田谷区や練馬区などはほかと比べて面積が広く、低層住宅街が広がっているため高齢者人口カバー率が低い。
CVS店舗から500m圏内の平均商圏人口※は、東京都23区が1店舗当たり1701人であるのに対して、全国平均が同1593人と、人口カバー率に比べると500m商圏人口の差は東京都23区と地方で大きく異ならない。一方、商圏を300m以下で取ると、東京都23区が1店舗当たり1495人、全国平均が1025人と、商圏人口の差が大きい結果となる。東京23区ではCVS店舗の集積が高く、500m圏では商圏の重複する店舗が多くなるためだ。
東京都23区では、「まいばすけっと」をはじめとした都市型小型食品スーパーの店舗数が増えており、CVSと商圏が重複するケースが多くなってきている。しかしCVSの存在を脅かす店舗数にはなっておらず、CVS優位の状況は今後も続きそうだ。
※複数の店舗で商圏が重複するエリアについては、人口を等分してカウントしている
(「ダイヤモンド・チェーンストア」2015年11/15号)