肥沃な消費市場ASEAN 日本の食品流通拡大の可能性を探る
第1回 日本を旅行したタイ人が、SNSで日本食の情報を広めている
近代的な「モダントレード」型の小売業が増加し、ASEANの中でも成熟した消費市場を形成するタイ。独自の食文化を有することタイにおいて、日本食はどのように捉えられているのだろうか。タイ国大使館商務参事官事務所の商務公使であるナッティヤー・スチンダー氏に聞いた。
外食チェーンを通じて、日本食への認知広まる
──商務部の業務について教えてください。
スチンダー氏 主な業務としては、タイから日本に輸出したいタイ企業をサポートしています。なかでも、外食や小売関連の支援が多いです。
日本におけるタイの食品への関心は高いと感じています。外食や小売業との協業だけでなく、2020年の東京オリンピックもタイの食品をアピールするための機会になりうると考えています。
──タイから日本への食品輸出にトレンドはありますか。
スチンダー氏 生鮮食品・加工食品ともに鶏肉の輸出が好調です。一時期、日本では価格の安いブラジル産の鶏肉が売場の多くを占める時期もありましたが、現在はタイ産の鶏肉が安定して伸びています。
今後は、肉類に加えて、水産加工品やその他の加工品の輸出も増やしていきたいと考えています。このほかにも、トムヤンクンをはじめ、パクチーなどタイ料理の素材、調味料も好調に伸びています。
──タイでは日本の食品はどのように受けとめられていますか。
スチンダー氏 日本食への関心は高まっていると思います。タイの首都、バンコクにあるトンロー地区では日本食の卸売市場が設立されました。日本食を提供する店も多く、非常に賑わいを見せています。日本人に加えて、タイ人の多くもこうした日本食レストランに行くようになりました。
日本食がタイ人に受け入れられる余地は大きいと感じています。日本を旅行するタイ人も増えています。日本で食べたものをタイでも食べたくなるでしょう。また、日本での体験をSNS(ショーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて情報発信することで、多くのタイ人が日本食に接する機会が増えていると思います。
──いつごろから日本食が人気を得るようになったのでしょうか?
スチンダー氏 日本食レストランがタイに進出したことが、日本食の認知を高めることの繋がっていることは間違いないでしょう。
2005年に大戸屋さんがタイに進出したことで、タイに日本の食文化を広めてくれました。ただタイ人にとっては若干、値段が高かったのですが、その後、やよい軒さんがより価格を抑えた日本食を提供することで、より多くのタイ国民が日本食を食べて、親近感を持ったといえるかもしれません。
日本食に対して、おいしさだけでなく、安全、健康といったプラスのイメージを持つタイ人は多く、今後も外食を中心に日本食へのニーズは高まっていくと思います。
バンコク中心部のショッピングセンターのフードコートでは、日本食を提供するテナントが増えています。こうした日本食のテナントが入居するショッピングセンターでは、来店客数が増えているようです。
今の消費者は新しいことに関心が高く、情報発信にも積極的です。最近では、SNSで話題に日本食店も増えています。今後もさらに日本食への関心は高まることが予想されます。日本の流通業やサービス業に関わる企業が、タイに進出することに期待をしています。
タイ国大使館商務参事官事務所
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(取材・文:「ダイヤモンド・リテイルレビュー」編集チーム)
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