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今がまたとない絶好のチャンス!先手必勝でシェアを拡大していく=コーナン疋田社長

プロショップ

ホームセンター(HC)企業が、今後も成長を期待できると熱い視線を送るのはプロ市場だ。各社とも独自フォーマットを広げ、支持獲得をめざしている。その中で、同市場にいち早く参入し、リーディングカンパニーとして躍進を続けるのがコーナン商事(大阪府)だ。なぜ「コーナンPRO」は成功したのか。強さの秘密、店舗づくりの手法、今後の事業展望を疋田直太郎社長に聞いた。

軌道に乗るまで時間がかかったPRO1号店

──2024年2月期決算(連結)は、営業収益が4726億円(対前期比7.7%増)、営業利益が240億円(同9.4%増)。上場しているHC企業で増収営業増益だったのは御社だけでした。好調の要因は何ですか。

疋田 直太郎(ひきだ・なおたろう)
1956年10月生まれ 79年4月コーナン商事入社。87年4月取締役店舗運営部長 89年4月常務取締役事業本部長。91年3月取締役副社長 2002年5月代表取締役副社長営業統括 13年11月代表取締役社長(現任) 17年5月ビーバートザン代表取締役会長 19年6月建デポ代表取締役会長(現任) 23年6月ホームインプルーブメントひろせ代表取締役会長(現任)

疋田 20年以上前から取り組んできたPRO事業が伸びていることが大きい。売上高に占める同事業の構成比は年々上昇している。25年2月期の構成比は29.7%と30%の大台目前に迫ると予想している。

──あらためてPRO事業について教えてください。「コーナンPRO」1号店は01年1月開業の「コーナンPRO東淀川菅原店」(大阪府大阪市)でした。そのタイミングで新業態をそもそもなぜ出したのですか。

疋田 00年初頭はまだHC市場が拡大していた時期だった。しかし、成長が鈍化すると予想して、次なる事業の柱を探し始めた。プロ市場に着目したのは、当時、世の中に類似の店がなかったからだ。

 これまでHC業態では新たなカテゴリーや品目などを取り入れてラインロビングしながら差別化を図っていた。その一方で、ビジネスの原点に立ち返り、プロ、職人の店という切り口で一から新しいフォーマットをつくることにした。

 試行錯誤の末、完成したのは売場面積800坪、屋外売場を合わせると1000坪の店舗だった。

 あくまで実験店なので既存HCの隣接地に建てた。

──開店後の反応はどうでしたか。

疋田 オープン当初は、まったく振るわなかった。

 立ち上げに当たってはチラシを打たず、そもそも認知されていなかったこともある。また品揃えについてもHCのDIY用品をベースにした売場だったため、プロからは仕事で使えないとみられたのだろう。

 「何とかせねば」と職人のお客さまに直接、要望、意見を聞きながら品揃えや売場づくりに反映していった。結果的に、当初の商品はすべて新しいものに入れ替わった。このように試行錯誤を重ねていった結果、少しずつ売上を伸ばしていくことができた。

──手応えを得て、すぐに積極出店へ転じたのですか。

疋田 いや、すぐには「これならいける」という確信は持てなかった。しばらくは既存のHC店舗の敷地内に出店したり、業績が芳しくなかったHC店舗からの業態転換で店舗数を増やした。

 その後、05年に新築で単独出店した「コーナンPRO新在家店」(兵庫県神戸市)が成功したことで、ようやくPRO事業が少しは軌道に乗ってきたと実感できた。

──現在はPRO事業が御社の業績をけん引する成長エンジンへと育っています。

疋田 現在、出店戦略においてもPRO業態が主軸になっている。25年2月期はグループで37店舗(国内)を出すが、そのうち22店舗はPRO業態。当面は、このペースで新規出店を続けて店舗網を広げていく考えだ。

ヒトの力こそが最大の武器

──コーナンPROの強みと特徴について教えてください。

疋田 職人さんの声、ニーズを重視した品揃え、サービスにある。小売業としてはごく当たり前の方針に聞こえるだろうが、この点を徹底しているところにコーナンPROが支持される理由があると考えている。

 そうした品揃え、サービスを実現するため、大切にしているのはお客さまとの会話だ。来店された方には積極的に声を掛け、ご要望をはじめ、生の情報を収集している。1号店の東淀川菅原店を立ち上げたときは、手本となる店がなかった。すべてお客さまに教えてもらうつもりで意見を聞き、店づくりに役立てることで業績が上向いた。この姿勢は今も変わっていない。

1号店の「コーナンPRO東淀川菅原店」

──接客を重視されるなか、店舗スタッフの教育はどのようにされていますか。

疋田 PRO業態の店舗スタッフは、原則としてPRO事業の中で経験を積ませるようにしている。そうすることでノウハウを蓄積できる。さらにPRO業態向けの教育制度も充実させ、定期的に研修会を開催してスタッフの育成を行っている。

 それに加えて、店舗ではかつて建築職人だった方を「技能職社員」として積極的に採用しているのもコーナンPROの特徴の1つといえるだろう。経験者なので現場に詳しく、頼りになるとお客さまからは好評だ。

──一般的にプロショップではローコスト運営のために、店舗当たりのスタッフの人数を減らす傾向にあります。コーナンPROの方針はどうですか。

疋田 職人さんとの会話、接客を重視する観点から、コーナンPROには社員も多く配置している。一見、非効率のようだが、ヒトの力こそ当社の武器だと考えている。同業他社のように人員を抑えて効率運営するプロショップとは一線を画した、独自のスタイルだと自負している。

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ドミナントのすき間を埋める

──コーナンPROの売場づくりの基本について教えてください。

疋田 もともと売場面積700〜800坪を標準フォーマットとしてきたが、より小商圏でも出店できるように500坪、300坪タイプも近年は増やしている。取扱商品数は約5万で、工具、金物、作業衣料などのほか、木材や鉄骨といった資材も販売している。

──プライベートブランド(PB)でプロ向けの「PROACT(プロアクト)」の品揃えを充実させているのも御社の特徴の1つです。

疋田 建築現場で毎日使用する道具なので、品質には神経を使って開発している。とはいえPBだけでプロショップの品揃えは成立するとは考えていない。頻度品では価格訴求型のPB、一方で品質が求められる分野はナショナルブランドで商品を構成するのが基本的な考えだ。

 中期経営計画ではプロ向けPB強化の方針を掲げている。とくにこれまでワークウエアが手薄だったため、開発を強化する。作業衣料専門店の品揃えも参考にしながら機能性やデザイン性も配慮したワークウエアを増やしていく。

──今後の出店戦略について教えてください。

疋田 PRO業態は大前提として商圏内に建築職人などの事業者登録数が多いエリアでないと成り立たない。その中でもコーナンPROが積極的に出店していくのは首都圏と関西。首都圏ではとくに神奈川県、関西では大阪府を中心に出店を重ねる。これまで築いてきたドミナントの間を埋めるかたちで出店していく。

──首都圏、関西圏といったドミナントエリア以外に、新たなエリアに出ていくことはありますか。

疋田 昨年4月には「コーナンPRO豊見城豊崎店」(沖縄県豊見城市)を出店して、初めて沖縄県に進出したが、順調に推移している。沖縄県内にはあと4〜5店舗出店したい。

 また23年6月にグループ入りしたホームインプルーブメントひろせ(大分県/田中美博社長)は、長崎県長崎市に「OK PRO住吉店」というPRO業態を展開しているがこちらも好調だ。

 いずれのエリアでも、浸透しているブランドを使い分けながらシェアを獲得していきたい。

今こそ好機 先手必勝で動く

──19年6月には会員制卸売業の建デポ(東京都/竹内栄吾社長)を買収しました。建デポはコーナングループに入ってから業績が急回復しました。

疋田 振り返れば赤字企業の建デポを約240億円で買収したときには、「高い買物ではないか」と揶揄(やゆ)する声も聞こえてきた。しかし、コーナンPROで培ってきたノウハウと建デポが持つ技術力・接客力の高さを生かすことで、翌年には黒字化することに成功した。

 首都圏を中心に全国で60店舗以上の店舗網を一気に広げることができたことも大きい。首都圏でゼロから新規出店することを考えると、スピードアップにつながったと考えている。

 買収した当時はうまくいくかヒヤヒヤしたが、今となっては良いM&A(合併・買収)になったとほっとしている。

──今後の目標を教えてください。

疋田 PRO事業の売上高だけで、近いうちに1500億円、中長期では2000億円を数値目標としてめざしていく。

 かつて職人さんが利用していた金物店は年々、急激に減少し続けている。それがわれわれにとって大きなチャンスになっている。

 現在のプロ市場はかつてのHC全盛期を彷彿(ほうふつ)とさせる、またとない好機だとみている。1990年代はまだ当社に資本力がなく、同業他社が店舗数を拡大していくのを、指をくわえて見ることしかできなかった。そこで水をあけられてしまった。

 プロ市場ではわれわれがリーディングカンパニー。この時期を逃すことなく、先手必勝の気持ちでシェアを拡大していきたい。

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コーナンPROの強さの秘訣
売場づくりの変遷

 コーナンPROが標準フォーマットとしてきたのは売場面積700~800坪。しかし問題は、まとまった広さの物件が多く出てこないことだった。そこで2010年代から、売場をコンパクトにすることで出店ペースを加速させる試みをスタートした。

 最初の挑戦は、11年4月にオープンした「コーナンPRO生野店」(大阪府大阪市)。売場面積が従来よりも2~3割小さい約500坪であるにもかかわらず、従来店に遜色ない品揃えを実現した。

 小型化に当たり、利用客の動線を徹底的に分析し、通路幅や売場の配置を見直した。たとえばネジやクギ、接着剤といった小さな商品の売場周辺はある程度、通路幅を縮めても問題ない。しかし大型資材売場からレジに通じる通路は、台車で運搬するため一定の幅を確保する必要がある。

 さまざまな角度から検証を重ねてレイアウトを組み直した結果、5万SKUの品揃えができるフォーマットを完成させるに至る。

密度の高い売場づくりを行うことで、小型化に取り組む

 さらにチャレンジは続いた。16年11月の「コーナンPRO吉祥院店」(京都府京都市)は売場面積500 坪、19年9月の「コーナンPRO東寺南店」(同)は300坪で出店した。

 これらの店舗では通路幅や売場配置に加えて、什器の高さも工夫する。従来店よりも高い2400㎜、 2700㎜に設定した。取扱商品数は4万強とやや少なくなったが、職人が現場仕事で必要とする一通りの商材を取り扱い、利用客からは好評を得ている。

 首都圏、関西圏を中心にドミナントをさらに深耕していくコーナン商事。今後も小型フォーマットを武器に、出店ペースを緩めることなくプロ市場のシェア拡大にまい進していく。

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