今がまたとない絶好のチャンス!先手必勝でシェアを拡大していく=コーナン疋田社長
ホームセンター(HC)企業が、今後も成長を期待できると熱い視線を送るのはプロ市場だ。各社とも独自フォーマットを広げ、支持獲得をめざしている。その中で、同市場にいち早く参入し、リーディングカンパニーとして躍進を続けるのがコーナン商事(大阪府)だ。なぜ「コーナンPRO」は成功したのか。強さの秘密、店舗づくりの手法、今後の事業展望を疋田直太郎社長に聞いた。
軌道に乗るまで時間がかかったPRO1号店
──2024年2月期決算(連結)は、営業収益が4726億円(対前期比7.7%増)、営業利益が240億円(同9.4%増)。上場しているHC企業で増収営業増益だったのは御社だけでした。好調の要因は何ですか。
疋田 20年以上前から取り組んできたPRO事業が伸びていることが大きい。売上高に占める同事業の構成比は年々上昇している。25年2月期の構成比は29.7%と30%の大台目前に迫ると予想している。
──あらためてPRO事業について教えてください。「コーナンPRO」1号店は01年1月開業の「コーナンPRO東淀川菅原店」(大阪府大阪市)でした。そのタイミングで新業態をそもそもなぜ出したのですか。
疋田 00年初頭はまだHC市場が拡大していた時期だった。しかし、成長が鈍化すると予想して、次なる事業の柱を探し始めた。プロ市場に着目したのは、当時、世の中に類似の店がなかったからだ。
これまでHC業態では新たなカテゴリーや品目などを取り入れてラインロビングしながら差別化を図っていた。その一方で、ビジネスの原点に立ち返り、プロ、職人の店という切り口で一から新しいフォーマットをつくることにした。
試行錯誤の末、完成したのは売場面積800坪、屋外売場を合わせると1000坪の店舗だった。
あくまで実験店なので既存HCの隣接地に建てた。
──開店後の反応はどうでしたか。
疋田 オープン当初は、まったく振るわなかった。
立ち上げに当たってはチラシを打たず、そもそも認知されていなかったこともある。また品揃えについてもHCのDIY用品をベースにした売場だったため、プロからは仕事で使えないとみられたのだろう。
「何とかせねば」と職人のお客さまに直接、要望、意見を聞きながら品揃えや売場づくりに反映していった。結果的に、当初の商品はすべて新しいものに入れ替わった。このように試行錯誤を重ねていった結果、少しずつ売上を伸ばしていくことができた。
──手応えを得て、すぐに積極出店へ転じたのですか。
疋田 いや、すぐには「これならいける」という確信は持てなかった。しばらくは既存のHC店舗の敷地内に出店したり、業績が芳しくなかったHC店舗からの業態転換で店舗数を増やした。
その後、05年に新築で単独出店した「コーナンPRO新在家店」(兵庫県神戸市)が成功したことで、ようやくPRO事業が少しは軌道に乗ってきたと実感できた。
──現在はPRO事業が御社の業績をけん引する成長エンジンへと育っています。
疋田 現在、出店戦略においてもPRO業態が主軸になっている。25年2月期はグループで37店舗(国内)を出すが、そのうち22店舗はPRO業態。当面は、このペースで新規出店を続けて店舗網を広げていく考えだ。
ヒトの力こそが最大の武器
──コーナンPROの強みと特徴について教えてください。
疋田 職人さんの声、ニーズを重視した品揃え、サービスにある。小売業としてはごく当たり前の方針に聞こえるだろうが、この点を徹底しているところにコーナンPROが支持される理由があると考えている。
そうした品揃え、サービスを実現するため、大切にしているのはお客さまとの会話だ。来店された方には積極的に声を掛け、ご要望をはじめ、生の情報を収集している。1号店の東淀川菅原店を立ち上げたときは、手本となる店がなかった。すべてお客さまに教えてもらうつもりで意見を聞き、店づくりに役立てることで業績が上向いた。この姿勢は今も変わっていない。
──接客を重視されるなか、店舗スタッフの教育はどのようにされていますか。
疋田 PRO業態の店舗スタッフは、原則としてPRO事業の中で経験を積ませるようにしている。そうすることでノウハウを蓄積できる。さらにPRO業態向けの教育制度も充実させ、定期的に研修会を開催してスタッフの育成を行っている。
それに加えて、店舗ではかつて建築職人だった方を「技能職社員」として積極的に採用しているのもコーナンPROの特徴の1つといえるだろう。経験者なので現場に詳しく、頼りになるとお客さまからは好評だ。
──一般的にプロショップではローコスト運営のために、店舗当たりのスタッフの人数を減らす傾向にあります。コーナンPROの方針はどうですか。
疋田 職人さんとの会話、接客を重視する観点から、コーナンPROには社員も多く配置している。一見、非効率のようだが、ヒトの力こそ当社の武器だと考えている。同業他社のように人員を抑えて効率運営するプロショップとは一線を画した、独自のスタイルだと自負している。
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