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コーナングループ入りで建デポが生まれ変わった理由=建デポ竹内社長

プロショップ

建築資材・工具などの会員制卸売店舗を80店舗(2024年2月末時点)展開する建デポ(東京都)。創業以来赤字体質が続いていたが、19年6月にコーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)の傘下に加わり、1年で黒字化を達成。今では再成長に向けて新規出店も加速させている。この5年で何が変わったのか。竹内栄吾社長に成長戦略を聞いた

大型店舗を改装のモデルに

竹内 栄吾(たけうち・えいご)
●1968年2月生まれ、大阪府出身。86年3月コーナン商事入社。2011年5月上席執行役員PRO事業部長、12年5月取締役・上席執行役員PRO事業部長。18年1月取締役・上席執行役員経営企画部・EC営業部担当を経て、19年6月建デポ代表取締役社長(現任)

──2019年6月、建デポはコーナン商事の完全子会社になり、竹内さんが新社長に就任しました。建デポの社長に就いて最初に何をされましたか。

竹内 まず3カ月をかけて全店に足を運んだ。従業員に顧客志向の姿勢があったのはよかった。それから会社方針を掲げ、具体的なフロント戦略として品揃えや価格について考え方を示し、コーナン商事のプライベートブランド(PB)の導入を強化する方針を出した。コーナンPBの粗利益率は建デポより高いため、収益構造を変えることができると考えたからだ。

──21年6月に川口安行店と朝霞三原店を全面改装されました。両店を含めた店舗改革について教えてください。

竹内 両店とも売場面積1000坪クラスの大型店舗で、販売力のある店舗だ。大型店舗は改装のインパクトを出しやすい。取扱商品が1万7000品目だったため、大型店舗で本来必要な2万8000品目まで増やした。改装後、両店とも短期間で売上が伸びた。

 現在、この成功事例を400〜500坪の既存店に広げているところだ。都市部にある300〜400坪の店舗については、とくに什器や売場ゾーニングを工夫して変えていく。「コーナンPRO」でも経験したが、浸透するのに3年かかったから、それくらいはかかるだろう。

職人の目線で買場を徹底研究

──品揃えや買場(建デポでは売場を「買場」と呼ぶ)づくりで見直されたのはどういうところですか。

竹内 それまでの個店経営をやめ、チェーンストアとしての品揃えの考え方を理解してもらった。

 ポイントは選ばれるための品揃えと数値に基づく改善。たとえば坪当たり効率の改善や会員さまとの接点となる買場を事実に基づいて改良することを強く推し進めた。

 一例を挙げると、ある店舗を訪れたとき雨どいが置いていなかった。なぜなのか聞いてみると、売れないからという。置いてみて売れなかったのではなく、売れないだろうという思い込みからだった。チェーンストアだからといって全店が同じ品揃えをする必要はないが、必要な商品がない場合、理由を必ず確認するようにしている。このように全てに理由を求めた。

 買場づくりでは、会員さまが時間を気にすることなく選びやすく買いやすいように、通路や什器について十分に検討して店内空間をつくるようにした。そうすることで、従業員間のコミュニケーションがしやすくなったという声も挙がった。通路や什器の工夫で会員さまに商品が置かれている場所を聞かれるケースが減ったからだ。店内サインについても、なぜこの高さなのか、なぜこのサイズなのか、なぜこの角度なのか、会員さまにとってどうなのか、突き詰めて検討した。

──会員さまファーストでの品揃えや買場づくりに取り組んだわけですね。

竹内 外看板についても、会員さまの半数がワンボックスカーで来店されるので、ドライバー目線で接道からどう見えるかを徹底的に検討し設置した。必要以上に多く設置するのではなく、必要な場所に必要なサイズ・数量を設置したところ、外周サイン費用が削減されるなど副次効果も生まれた。業務というのは、作業とは違って、会員さまと従業員にプラスになり、会社としてキャッシュアウトを減らす仕事だと話している。このことが浸透できた事例だろう。

──大型店舗の改装による成功事例を300〜400坪の店舗に取り入れると、かなり詰め込むかたちになりませんか。

竹内 300〜400坪の店舗は、あくまでドミナントを形成する上での一つのピースとしてとらえている。現段階では、プロショップはホームセンターよりも市場規模が小さく、競争は激しくなっていくから職人に魅力のない店舗では商売が成り立たない。ドミナント形成上、押さえられていないエリアへの出店を考えると、投資額のかさむ大型店舗である必要はなく、300〜400坪でいい。

 東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市圏では地価が高く、東京はこの一年で20%上昇している。その中でフォーマットとして成立させるためには、在庫を持たなくても、在庫のある店舗から配送するなど、在庫を持たずに在庫屋になる必要がある。ここで初めてわれわれなりのDX(デジタルトランスフォーメーション)が出てくるだろう。

──具体的にはどんな施策を考えていますか。

竹内 会員制の魅力を生かすことだ。先にビジネスモデルをつくるのではなく、まずは会員さまとのかかわりを深める。たとえば会員さま向けに決済、人材派遣など物販以外のさまざまなサービスを用意している。

 一部の店舗では中古品買取や販売も常時行っており、非常に好評だ。中古品の購入単価は高く販売メリットもあるので今後拡大していきたい。

 建デポとかかわりを持っておきたいと思われ、第一の購入先になることが大事だ。会員さまの日課の中に、建デポを選択肢として入れてもらう。そのためにはワンストップショッピング、すなわち必要な資材・工具が1カ所で購入できるという機能を拡充する必要がある。補完的なサービスもその1つだ。

 お客さまのすべての仕事にかかわり、そこに費やされるお客さまのコストを軽減することも流通業の使命だろう。

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新規出店はFC拡大も視野

──今後の出店戦略を教えてください。

竹内 24年は8〜10店舗、25年は6店舗、その後は年8〜10店舗を出店する。新店を出せば売れるという時代ではないから、稼ぐ店舗をつくるために丁寧に出店していかなければならない。まずは、過去3年で出店した店舗の個店ごとの育成計画を進めること。そして、新規出店地域としては関東が中心だが、九州や関西でも2〜3店舗出店したい。

──FC(フランチャイズチェーン)契約先のナンバ(岡山県/難波賢治社長)が2店舗を展開されています。FC展開はどう考えていますか。

竹内 FCは拡大していきたい。やはりその地域で認知度の高い企業は市場への浸透力が極めて高いことから今後も拡充していくつもりである。

 たとえば、ナンバさんは中国エリアでの知名度が高い。現在2店舗を営業しているが、引き続き増店することを期待している。すでに数社からFCの申し込みがある東北でもFC展開を始めたい。

建デポはFC展開の拡大も視野に入れる。写真はナンバのFC2号店「建デポ広島大町店」

プロパー社員が語る建デポの歴史と変化

人事総務法務部
部長
若林 均

 建デポは「トステムビバ」による野田店出店(2009年)に始まる。その後、建材・住設のLIXILが運営する建デポとの統合(12年)、分社化(15年)を経て、19年にコーナン商事の100%子会社となった。

 メーカー傘下にあったとき買場づくりより、営業を優先していた。プライベートブランド(PB)も持っていたが、44年ほどで60店舗超と大量出店をしていて、欠品が発生しても後回しになっていた。店舗運営、品揃え、粗利益に限界がきており、12年から立て直しを試みたが、計画した数値目標には至らなかった。

 ただ、会員さまにとって必要な商品は何か、時代の変化に応じて品揃えをどう変えていくのかといった問題意識はあって、品揃えや価格体系を見直す必要性を感じていた。けれども、結局やり遂げることはできなかった。

 コーナングループに入ってからは品揃えが変わりPBも導入され、買場が変わり新しいお客さまが増えた。迷いがあってうまく舵かじ取りができないときもあったから、トップがブレずに明快な指示を出し、それが遂行されていったのは大きかった。品揃えや買場づくりの新しい取り組みでは気づきも多く、自分自身も成長できたと感じている。

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