小売業が環境価値を消費者に訴求するための2つのアプローチとは

解説:高倉 和也(ローランド・ベルガー プロジェクトマネージャー)
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バリューチェーン全体でのCO2削減をめざす動きが加速

 近年、異常気象の頻発や新型コロナウイルスに代表される感染症拡大などを背景に、消費者の環境問題への関心がさらに高まっている。このため小売業界では、自社における環境対策に加え、それらの取り組みを消費者にどのように訴求していくかも重要な課題となっている。そこで本稿では、欧米小売企業を中心とした具体的な事例を共有したうえで、小売企業が取るべきアクションについて考察したい。

近年、異常気象の頻発や新型コロナウイルスに代表される感染症拡大などを背景に、消費者の環境問題への関心がさらに高まっている(写真はイメージ、i-stock/SB)

 ステークホルダーからの要請もあり、昨今、小売企業において環境対策の中心的テーマとなっているのは「CO2排出量の削減」である。店舗における再生可能エネルギーの導入や配送車両のEV(電気自動車)化など、各社でさまざまな取り組みを進めているが、Scope1・Scope2といった自社でのCO2排出量の削減努力だけでは不十分とみる向きも強まりつつある。
※Scope1/2/3:温室効果ガスのタイプを発生プロセス・発生源によって区分したもの。Scope1が自社の製造プロセスで直接発生するもの、Scope2が他社から供給されたエネルギーを使用する際に間接的に排出されるもの、Scope3が自社に関係するが発生源が外部にあるものを指す

 たとえば食品のバリューチェーンにおいては、CO2排出量の約9割は農業活動や食品加工といった上流工程で発生している。グローバルで課題となっている環境問題の解決を実現するためには、バリューチェーン全体への影響力が大きい食品小売企業が主体となって、Scope3を含むサプライチェーン全体での排出量を削減することが求められているのだ。

 このような市場からの要請を受け、実際に欧米小売企業の一部では

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